My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に
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「アレン、AKUMAは探知できる?」
「いえ。この辺りにはいないみたいです」
キュィィ…と僅かな振動音を響かせながら、アレンの左眼にスコープのようなものが浮かび上がり辺りを探る。
アレンの左眼は、AKUMAの存在を探知できる特別なもの。
どういう経緯で身に付けたものなのか詳しいことは知らないけど、AKUMAと戦う身としては大変頼りになる代物だ。
でもそれを活用してもAKUMAの存在は見当たらない。
二人と共に別行動を始めて、まだ数分。
結論を出すには早いけれど。
「なんでいないんだろう…」
「またそこらの動物の皮でも被って辺りに潜伏してんじゃねぇのか」
「動物の皮?」
「うん、前にね。同じような討伐任務で、神田と墓地に向かったんだけど、其処でAKUMAが犬の皮を被って擬態する現象があったの」
問い掛けてくるアレンに、掻い摘んであの時の任務内容を話す。
「雪さん…任務先が墓地ってよくあるんですか」
「…少なくはないと思う」
だけどアレンが疑問視したのは、AKUMAのことじゃなく任務地のことだった。
告げる顔は青白い。
アレンもラビと一緒で、ホラーとかそういう系統苦手だもんね…。
「それは大変ですね」
「あはは…まぁでも、大体の任務は神田がいてくれたから」
同情するようなアレンの眼差しに、つい苦笑しながら反対側に目を向ける。
そこで同じように隣を歩く神田が、ちらりと視線だけを向けてきた。
「そういう系統に強いから、割と助かってたかな」
「お前がビビり過ぎなんだよ」
その視線は一瞬だけで、すぐにふいと逸らされる。
まぁそこは否定しないけど。
「なんでそんなに平気なの?」
「逆に何が怖いんだよ。ただの墓だろうが」
「幽霊とか出るかもしれないでしょ」
「元は同じ人間だろ」
うわぁ、凄い。
元は同じだなんて。そんな発想できる人早々いないと思う。
いくら同じ人間でも、幽霊は幽霊。
生きてる世界が既に違う。
…あ、でも。
声にならない声で「ありがとう」と「ごめんね」を伝えてくれた咎落ちのあの子は、確かに自分と"同じ"だと感じたからなのか。そう怖くなかったかもしれない。