第49章 つむぎ星に願いを

「…ユウを不安にさせるようなことを、したかも…」

「ほう。浮気でもしたか？」

「し、してないよ！」



　そうだのう。
　ティキとのあれを浮気と取るには、まだ決定打に欠ける。
　ティキは"快楽"のノアだ。
　あ奴の放つ色欲を前に、薬漬けの体で逆らえるはずもない。

　どう捉えるかは、結局は本人次第だが。



「っでも、その…もしかしたら、ユウには別に…好きな人が、いるのかもって思ってしまって…体の事情もあったけど、大事な時に突っ撥ねてしまったの」



　デザイアスの揺さぶりは、どうやら雪に効果はあったらしい。
　まぁ、デザイアスの言ったことは概ね真実だしの。

　神田ユウには、切っても切れぬ想い人がいる。
　そしてそれは残念ながら、雪ではない。



「そんなこと今まで思ったこともなかったのに…だから、どうしたらいいのか…そんなこと思いたくないのに、頭の中から消えてくれないの…」

「それは難儀だのう…」



　思ってもいないことを、さも親身に口にする。
　ワタシも中々に性の悪い。

　絞り出すように伝えてくる雪には、真剣具合が垣間見える。
　それだけ真に想っているからこそ、崩れてしまえばショックも計り知れないだろう。
　支えが強靭であればある程、折れてしまった時の修復は難しい。
　まぁまず、本人達は折れぬと思っているからのう。



「私…どうすればいいと思う…？」

「む？」



　うむうむと頷いていた顔が止まる。
　目を向ければ、縋るような瞳で見る雪と目が合った。

　…まさか恋愛相談をされるとは。
　これは予想外じゃった。



「う、ううむ…ワタシもそちらに長けておる訳ではないからの…」

「そうなの？　なんでも知ってる感じしてた。ワイズリー、仙人みたいだし」

「こんな口調なだけじゃわい」

「じゃあ、男の人としての意見が聞きたい。ワイズリーがユウなら、相手にどうして欲しい？」

「の…」



　そんなことワタシに聞くでない。
　と言いたくもなったが、縋る子犬のような目で見られると反論できなかった。

　なんじゃその目は。
　そんな目で見るな。