My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「…そんなに不安を煽るだけなら、御主も別の者に目を向けてみたらどうだ?」
「別の者?」
仕方なしにと、雪が求めている助言をくれてやる。
じゃがワタシも善人ではないのでな。
「その男と同じ立場になってみるといい。男が他の者に現を抜かしているのなら、御主も抜いたらいい。視野を広くすれば、見えなかったものも見えてくる」
「何言って…」
「ワタシなら雪を不安にはさせんがのう」
「…ワイズリー?」
雪の手を取り、優しく握る。
主が弱みを見せるなら、そこにつけ込むことくらい容易にするぞ。
男とはそういう生き物だ。
「此処には雪とワタシしかおらぬしの。邪魔が入ることはない」
握った手を引き寄せ、薄く笑いかける。
「雪が望むものを全て与えてやるぞ」
主が何を望んでいるのか、手に取るようにわかる魔眼のワタシなら、そんな不安な表情などさせはしない。
此処ならば神田ユウもティキも手は届かない。
ワタシだけの世界だ。
「どうだ? ワタシと遊ん」
「何言ってんの?」
「…のの」
しかし返されたのは、あっさりとした怪訝な顔。
思わずがくりと肩が落ちる。
せめて最後まで言わせてくれてもいいじゃろうに…。
そんなに早々と…ティキの時はまだ揺らいでおったじゃろ、御主…。
「冷たいのう…」
「あ、ちょっと。泣かないでよっ? そんな冷たく言ったつもりないから…!」
顔に両手を当ててシクシクと泣き真似をすれば、本気で心配された。
まぁ以前は、泣き真似に胡散臭いだのと突き返されたしのう。
ここまで親身になってくれるところは、進歩と言おうか。
「ワイズリーは、なんというか…その、仙人みたいな兄みたいな感覚というか」
「じゃから仙人はないじゃろ、仙人は」
「とにかく、面倒見の良いお兄さんみたいな感覚というか。…見た目は大分若いけど」
転生した際のこの体は、10代の男じゃったからのう。
「ふむ、兄か…それも悪くないな。雪が望むならお兄ちゃん♡と呼んでも」
「呼ばない」
「…のの」
じゃから途中でばっさり切り落とすのはやめて欲しいんじゃよ…ワタシも傷付くぞ。