My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「間近でラースラの想いを感じたけど、あの男は今の彼女の生命線だよ。失ってしまえば、最悪心が崩壊するかもしれない」
まぁそれもそれで面白いけれど、と付け足すシェリルの笑顔に慈悲はない。
シェリルにとって、雪という存在はまだ愛を向けるべき存在にはなっていない。
その心を削ることには興味があるが、同じノアでもロードやティキとは全くの別物だ。
「でもそこにあの怒のノアメモリーが呼応してしまえば、14番目と同じになってしまう可能性もあるね。やっぱりお勧めはしないかな」
「じゃああのエクソシストの野郎ごとラースラをとっ捕まえればいんじゃね?」
「ヒ!そうだ!アイツを操れば、ラースラも操れる!」
「それはパス。俺が嫌だ」
今度は名案!との顔で挙手するジャスデビに、ティキが一蹴。
今回のことで、雪の現状を目の当たりにすると同時に、あの男とは相容れないと悟った。
できるならばこの世から消して、二度と雪の前に現れないようにしてやりたいくらいだ。
「いずれあいつは殺るよ。エクソシストだしな、退治しとかねぇとだろ?」
「じゃあ雪はぁ?」
「それも甘い幻想ごっこは終いだ。夢から醒まさせる」
二人だけの世界で雪との愛瀬を重ねるのも悪くはなかったが、現実の彼女を知ってしまった。
黄色人種の柔らかい肌。
深い闇のような色の瞳。
"夢"で出会っていた彼女とは幾分違う声をしていたが、男装の為に偽っていた声帯なのだろう。
それでもティキの愛撫に溺れ抵抗しながらも済し崩しにされ喘ぐ姿は、脳裏に焼き付いている。
触れてしまった。
知ってしまった。
あれが欲しい。
手に入れたい。
訊ね見上げたロードの目にだけ、ティキの表情の変化が見て取れた。
影を生む顔に宿る、鈍い光を放つ金色の瞳。
強欲を仄かに含んだその色に、ロードは目を丸くした。