My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「世話焼きたいならロードの処に行けよ。俺に構うな」
ようやく上がるティキの目が、シェリルへと向いた。
薄暗い明かりに反射して鈍く光る金色の瞳の奥底は、暗い。
無表情ながら感じる圧は、眉目秀麗な顔立ち故に余計に背筋を凍らせる。
しかしシェリルには逆効果のようで、手首の骨を軋ませながらも高揚した表情でティキを見つめる始末。
救いようのない義兄に、ティキの虫の居所も更に悪くなる。
「それは八つ当たりというものだぞ、ティキ」
止めたのは、足音もなく部屋へと踏み入れた者の仲裁だった。
「気持ちはわからなくもないがのう」
やれやれ、と溜息混じりに現れたのは、頭にターバンを巻いた青年、魔眼のワイズリー。
その背後にはハート型の扉が存在しており、ひょこりと向こう側から顔を出したのは小柄な短髪少女。
「派手にやられたねぇ」
「ロード!僕に会いに来てくれたのかいっ?」
「うん。ティッキー達にもね。エクソシストと戦ったってフィードラから聞いたから」
「フィードラに?彼が監視してたのかい?」
ぴょこんっと軽い足取りで部屋へと踏み入れるロードに、輝く笑顔でシェリルが出迎える。
広げた彼の腕に遠慮なく抱き付くと、にっこりと愛らしい笑顔をロードは浮かべた。
「今回は"監視"ではなく"通信"だ。ジャスデビからの、のう」
「雪のこともね、聞いてるよ」
予想もしなかった双子の機転に珍しそうにシェリルが目を向ければ、ジャスデビは面白くもなさそうに部屋の隅で毒突く。
「ティキはブチ切れるし、シェリルはティキバカだし。そんな奴ら野放しにしてたら勝てる試合も勝てねぇだろ」
「なんだろう…君達に心配されると世界の終わりな気がするよ…」
「ァアン!?うっぜ殺すぞテメェ!」
「心配なんてしてないし!迷惑だって言ってるだけだし!!」
途端にギャアギャアと喚くジャスデビを余所に、するりとシェリルの腕から抜け出たロードがティキの下へと向かう。
「ティッキー、ブチ切れたんだぁ?」
ふんわりとした足取りで目の前に立つ少女を、ティキはちらりと見上げた。
しかしすぐに逸らした目は、とある一点を捉える。
「…知ってたんだろ」
冷たい声で呼んだのは、魔眼の彼。