My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「ああ、なんでこんな…」
「………」
「全く酷いことをする」
「………」
「けれど何故だろう、君の体が尚の事凛々しく見えるのは」
「………」
「嗚呼…本当に…」
「………」
「なんて美しい!!」
「じゃねーよ黙れ変態野郎!!」
「デロ達も怪我してるんですケド!?その消毒液寄越せやゴラァ!!」
薄暗い照明が灯る、とある広い部屋。
高級な分厚い絨毯に、落ち着きのある家具が並ぶ。
其処で甲斐甲斐しくティキの怪我の手当てをしていたシェリルの渾身の叫びに、ついに反論したのは同じく互いの怪我を手当てし合っていたジャスデビだった。
ティキ本人はと言うと彼らの騒ぎに目も向けず、ソファの隅で肘掛けに頬杖をついたまま、じっと仄かな明かりを見続けていた。
「何言ってるんだい、君達よりティッキーの方が重症だろう?」
「じゃあなんだそのちまっちました手当ての仕方はよ!キモい顔で愛でてるだけで、治す気ねぇだろ!?」
「治すのも惜しいくらいに凛々しく美しいからさ。仕方ないだろう」
「ヒ…ただの変態じゃん…」
「仕方なくねーよアホか…」
問題児であるジャスデビにさえも呆れられるシェリルのティキ好きは、もう直りようのないそれこそ重症の怪我だろう。
呆れ果て関わることも諦めたジャスデビが、お粗末に巻いた包帯を引き摺りながら距離を取る。
そんな双子を気にすることもなく、楽しげにシェリルは再びティキへと向き直った。
「さ、次は胸の傷を見るよ。その服を脱いで」
「…いい」
目線は仄かな明かりに向いたまま。
素っ気なく断るティキに、それくらいのことでシェリルがめげるはずもない。
「駄目だよティッキー、バイ菌が入らないようにしておかないと。さぁ、脱いで」
「いいって」
再度伸ばした手は、今度はぱしりと軽く弾かれる。
それでもやはりシェリルの心はそんなことで折れるはずもなく。
にこにこと楽しそうな笑顔を浮かべたまま、ティキの服の裾を捲った。
「なら僕が脱がし」
「いいって言ってんだけど」
ミシリとシェリルの手首が軋んだ。
鷲掴み止めた手の主の声に起伏はないが、底冷えするような寒さがある。