My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に
『アレン・ウォーカーは"14番目"というノアのメモリーを持った宿主であることが判明しました』
モヤシには、あのクロス・マリアン事件以来もう一つ抱えた問題がある。
"14番目"と呼ばれるノア。
そいつのメモリーを移植された人間だからこそ、モヤシは伯爵の方舟を操ることができた。
クロス元帥があの事件で消える直前、その事実をこいつに言い残したんだとか。
敵の可能性もあるモヤシをそれでもエクソシストとして教団に置いているのは、方舟の能力を使用する為と、エクソシストの勢力軽減を防ぐ為。
つまりはモヤシは教団の仲間として認められた訳じゃなく、利用価値があると認められたから、教団(ここ)に置いてもらえている状況。
『もしアレン・ウォーカーが"14番目"に覚醒し、我々を脅かす存在と判断が下された場合は…』
『その時は僕を殺して下さい』
言い淀むコムイの言葉に被せるように、あの時モヤシははっきりそう言い切った。
自分の立場を少なからず理解はしてたんだろう。
『でも、そんなことにはならない。"14番目"が教団を襲うなら、僕が止めてみせる』
ただ、こいつの目は死んじゃいなかったが。
そのことを知っているのは、中央庁の奴らと教団幹部の人間、そして俺達エクソシストだけだ。
いちファインダーである月城は、モヤシの事情は勿論知らされていない。
「…ありがとうございます」
何も知らない月城の気遣いに、モヤシが笑顔を返す。
笑いたくもないのに笑っている顔そのもの。
見るとむしゃくしゃする、俺の嫌いな笑顔だ。
「……ぁ」
それに果たして月城も気付いたのかはわからないが、蚊の鳴くような声だけ漏らしてモヤシを見る。
何か言いたげに、それでも言葉が出ないかのように。
相変わらず、色々と言葉を呑み込む癖はあるらしい。