My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に.
チェスの世界チャンピオンである亡霊から、イノセンスの指輪を頂く方法はただ一つ。
チェスの試合で勝つこと。
その為には彼が思い入れのある特別なチェス盤が必要らしく、情報によるとそれは破損していて、修復の為にミランダさんが選ばれた。
ミランダさんのイノセンスは、一時的だけど完全に物体を元通りに修復する能力があるから。
「見えました、あそこですっ」
先頭を歩いていたキエさんが声を上げる。
顔を向ければ、柵が囲う墓地の入口が見えた。
神田との任務でのミュンヘンのあの墓地に比べると、きちんと管理されている綺麗な所だった。
こっちの方が、そんなに怖くないかも…。
「本当にそのイノ…なんとやらの仕業なのかね。あたしの弟が化けて出るのは」
「十中八九、それが原因でしょう」
ロンドンに着いてから、共に行動していたお婆さんが胡散臭そうにぼやく。
リンクさんのはっきりとした応えにも未だ信じられない目で、その腕には壊れたチェス盤が抱えられていた。
この人の名前は、カーラ・マーチン。
ベン・マーチンの姉らしく、この人から最初の情報を頂いた。
まぁ、一般人からすれば黒の教団はオカルト集団みたいに見えなくもないから…仕方ないとは思うけど。
「百聞は一見にしかず。見てもらえれば、わかると思います。弟さんのお墓に案内してもらっていいですか?」
そう頼み込めば、胡散臭そうにしながらもカーラさんは広い墓地の中を案内してくれた。
今回の任務は、いつもの任務と違ってほとんど情報が集まってる。
イノセンスの正体もわかってるし、気を付けることは出現報告のあるAKUMAだけ。
その万全の態勢として、アレンと神田の二人も選ばれたんだろう。
一から現地に赴いて、謎を解明していた普段の任務に比べれば、ここまで楽な任務はそうないと思う。
「これからも、こんな任務がいいなぁ…」
「こんな任務?」
思わず呟けば、ひょこりと後ろから白い頭が覗いてくる。
アレンだ。