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My important place【D.Gray-man】

第48章 フェイク・ラバー



「何故ノアである君が、黒の教団という組織の中で生かされているのか。特別な力を持っているからかい?そう思っているなら、とんだお門違いだ」



今までどんな誹謗中傷を聞かされても、虚ろな表情で耳にしなかった雪。
その目がシェリルを捉え、投げ掛けられる言葉を呑み込む。



「今の君は人間でもノアでもなければ、ましてや14番目のような異端者でもない。全てにおいて半端者だ。イノセンスには不適合の烙印を押され、ノアとしての能力も発揮できない。人間としての力量はあるかもしれないが、何か大きなことを成し遂げ賞賛でもされたかい?」

「………」

「されてないよねぇ。だとしたら僕らノアの耳にも少なからず届いているはずだし。怒のノアだと認めるまで、君という人間を僕らは塵程も気にかけていなかった。それだけの人物だった、ということさ」

「…っ」

「周りに混沌を撒き散らすのみで、誰の得にもなっていない。コントロールのできない力をいつ覚醒させるかもわからない君は、一種の爆弾だ。なのに何故教団がそんな君を殺さず拘束し続けるのか。わかるかい?」



問いに答えられないのは、薬の所為ではなかった。
シェリルの言葉はどれも雪の脳裏を一度は掠めたものだ。
それでも生かされる意義はあるのだと、現在の立場を認めて呑み込んできたもの。
漠然とした思いで立ち続けていた雪に、シェリルは優しく答えを導いた。



「神田ユウがいるからさ」



濁った瞳に光が宿る。



「セカンドエクソシストである彼が、教団にとって特別な存在だからだよ」



その瞳が揺らいだ。



「特別な彼が一目置いている存在がラースラ、君だ。だから教団は君を殺さない。神田ユウを教団の手足にし続ける為にね」



その言葉を聞いたのは二度目だった。
口調も表現も感情もまるで違ったが、言い換えれば同じこと。






""室長"という立場で見ても、君を救うメリットはある。…君は先に言った通り、神田くんにとって大きな存在だ。彼はセカンドエクソシストという、教団では貴重な戦力。そんな彼の心を左右する人物を、みすみす失っていいとは僕は思わない"






暗く冷たい教団の地下独房で、優しく語ってくれたコムイ。
あの時は救いのようにも感じたはずの言葉が、今は足場を崩すように突き刺さる。

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