My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に.
「今回は僕もいますから。何かあったら、遠慮なく頼って下さいね」
「…アレンもね。色々と大変でしょ。……無理しちゃ駄目だよ」
多くは語らず、心配そうに伺う月城にモヤシの顔が僅かに驚く。
恐らく月城が言ってんのは、クロス元帥のことだろうが。
『アレン・ウォーカーは"14番目"というノアのメモリーを持った宿主であることが判明しました』
モヤシには、あの事件以来もう一つ抱えた問題がある。
"14番目"と呼ばれるノア。
そいつのメモリーを移植された人間だからこそ、こいつは伯爵の方舟を操ることができたらしい。
クロス元帥があの事件で消える直前、その事実をモヤシに言い残した。
敵の可能性もあるモヤシをそれでもエクソシストとして教団に置いているのは、方舟の能力を使う為と、エクソシストの勢力軽減を防ぐ為。
つまりは、モヤシは教団の仲間として認められた訳じゃなく、利用価値があると認められたから、今は此処に置いてもらえている。
『もしアレン・ウォーカーが"14番目"に覚醒し、我々を脅かす存在と判断が下された場合は──……』
『…その時は、僕を殺して下さい』
言い淀むコムイの言葉に被せるように、あの時モヤシははっきりとそう言った。
自分の立場を理解してたんだろう。
ただ、
『でも、そんなことにはならない。"14番目"が教団を襲うなら、僕が止めてみせる』
こいつの目は死んじゃいなかったが。
そのことを知っているのは、中央庁の奴らと教団幹部の人間、そして俺達エクソシストだけ。
いちファインダーである月城は、そのことを知らされていない。
「…ありがとうございます」
にこりとモヤシが笑う。
その顔は、笑いたくもないのに笑っている顔そのもの。
見るとむしゃくしゃする、俺の嫌いなものだった。
「……ぁ」
それに果たして月城も気付いたのかはわからないが、微かに声を漏らしてモヤシをじっと見る。
何か言いたげに、でも言葉が出ないように。
…相変わらず、色々と言葉を呑み込む癖はあるらしい。