My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に.
「それじゃ早速、出発してくれるかな。方舟ゲートの準備はもうできてるから」
「暗証番号は、各自口頭で伝えられるから。忘れないように」
「…リーバーさん、私を見て言うのはやめて下さい」
「いや、ついな」
任務説明をコムイが終えて。ぼそりと呟く月城に、苦笑混じりにリーバーが頭を掻く。
そういや、こいつ前に暗証番号忘れたことあったな。
「そういえば雪さん、前に方舟の暗証番号──」
「わーっ!」
俺と同じことを思ったのか、そう言いかけたモヤシの口を慌てた月城の手が塞ぐ。
「暗証番号が…どうしたの? 雪ちゃん」
「あはは…なんでもない、なんでもない」
きょとんと尋ねる貧血女に、取り繕うように月城が笑う。
やっぱりその顔を見ても、もう前のように苛立ちはしなかった。
「アレン、ちょっとこっち来てっ」
「えっ、はい?」
ただモヤシの服を引っ張って周りから遠ざけるその姿には、どことなくイラついたが。
「一応、ファインダーとしてキエさん達の見本にならないといけないから。私のあのヘマ、黙ってて欲しいの」
「成程…わかりました、そういうことなら」
こそこそ小声で話し合ってるとこ悪いが、聞こえてるからな。
…つーか、モヤシと顔寄せ過ぎだろ。
「でも僕から見れば、雪さんは充分立派なファインダーですけどね。頼りになります」
「…そうかな」
いつもの紳士紛いな笑みを浮かべるモヤシに、月城が照れ臭そうに受け応える。
その姿は不快なものにしか映らなくて、気付けば足が向いていた。
「ごちゃごちゃ言ってねぇで、さっさと来い。無駄な時間かけんじゃねぇよ」
「ぅぐッ…か、神田…っ?」
「あ! 女性に手荒な真似しない!」
月城のマントのフードを強く掴む。
そのまま引き摺って司令室のドアに進めば、モヤシの手が強く引き剥がした。
うぜぇ。
「俺が話してるのはこいつだ、邪魔すんな」
「そんな乱暴に扱って、黙って見過ごす訳にはいきません」
月城越しにいるモヤシを睨む。
同じくそいつは、月城の肩を引き寄せたまま俺を睨み返してきた。