My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に.
「大方、幽霊でも出るかとビビってんだろ」
「そっ…んなこと、ないから」
「言葉詰まらせてんなよ。説得力ねぇな」
言えば、挙動不審に月城が首を横に振る。
あのゾンビ事件で、周りにビビっていたこいつの姿を思い出す。
あの時、あのコムイの実験室で。泣きそうな声で、弱い自分が嫌いだと月城は言った。
顔を歪めて、歯を食い縛って。まるで必死に何かに抗おうとしている、ガキみたいな顔で。
それでもその揺れる目は、確かに俺を映していた。
"エクソシスト"という枠組みじゃなく、俺自身を。
そう理解すると同時に、今まで感じていた苛立ちは嘘のように消えていた。
「はいはい。とにかく任務説明するよー。今回の任務地はロンドン。概要は──」
コムイの説明を耳にしながら資料を見る。
横に目線をずらせば、低い位置にある頭が目に入る。
任務説明を聞きながら、資料を見る顔はもう"仕事"の顔だった。
墓地を嫌がる顔もさっき俺の隣を歩きながら見せた表情も、どこにも見当たらない。
無駄な感情を入れない、仕事時の顔。
それはモロッコで見せた無感情なものに似ていたが、今は何故かそんなに嫌な気はしなかった。
…こいつの本音を、少しでも知ったからだろうか。