My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に
ひらりと、顔の横を上から落ちていく薄い桃色の花弁。
視線で追えば、足元に音もなく落ちる。
見えたのは足元に散らばる、同じく薄く色付いた花々。
まるで自分の周りを囲うように、至る所に咲き乱れている。
蓮華の花。
「神田?」
じっと花を見ていると、呼び声に止められる。
視線を向ければ、怪訝そうに俺を見る月城の姿があった。
「なんでもない」
目での問いに、手短に応えて視線を外す。
此処は教団内部の廊下。
間違っても、こんな花が咲き乱れるような場所じゃない。
俺の周りを囲うように咲き誇るその花々は、俺だけにしか見えないものだ。
『神田、まだ花がみえるかい』
昔に言われた。
『囚われてはいかんよ。それは幻だ』
俺の中に残る記憶の残像が、生み出す唯一のもの。
それでも。
──ねぇ、この花知ってる?
これは俺とあの人とを繋げる唯一のものだ。
切り捨てることなんてできない。