My important place【D.Gray-man】
第2章 空白の居場所
「待っ…神田!」
ぱさぱさと尾を振りながら、神田の背中に駆け寄るわんこ。
止めようにも遅くて、咄嗟に神田を呼ぶ。
あれがAKUMAだったら、神田の背中はガラ空きだ。
私の声に反応してか。振り返った神田が、反射的にだろう、そのまま流れるような動作で六幻を背後のわんこに振り下ろした。
──瞬間、
「──っ」
ピタリと、刃がわんこの頭部に当たる寸前で止められた。
え?
なんで──
「キャフンッ」
「わっ!?」
攻撃を止めた理由がわからず、思わずぽかんとしていると。神田の殺気に当てられたわんこが、驚いたように踵(きびす)を返して私に飛び付いた。
……え?
「お前…AKUMAじゃないの?」
飛び付かれて思わず尻餅をついたまま、腕の中でぶるぶると怯えている姿を凝視する。
この震えはどう見ても機械的なものじゃない。
「チッ」
鬱陶しそうに舌打ちして、神田が視線だけ寄越してくる。
多分、一瞬手前でわかったんだろう。
この子がAKUMAじゃないことに。
「隙ありィ!!」
それは一瞬の隙だった。
神田が私達に体を向けて、それ故にAKUMAに背を向けてしまった、ほんの一瞬。
その一瞬をAKUMAは見逃さなかった。
ガチャン、と機械を操作するような音が響く。
瀕死の体を起こしたAKUMAが、体を大きく変形させていた。
口と両手に生やしているのは巨大な砲。
まずい、またあの銃弾の嵐がくる…!
そう悟ると同時に、腕の中のわんこを強く抱く。
咄嗟に背負っていた結界装置に手を伸ばした。
間に合え…!
ドドドドドッ!!!!
瞬間、AKUMAの銃弾が咆哮を上げた。