My important place【D.Gray-man】
第2章 空白の居場所
「へへェ…思いっきり喰らったなァ、エクソシスト」
銃弾の音が鳴り止んで、その場に白い煙幕が上がる。
夜の風に吹かれて白い煙が漂う中。現れた黒い団服を纏った姿は、迷いなくその場に立っていた。
「チッ、無駄に怪我した」
鬱陶しそうに呟く体には、あちこち銃弾を喰らった跡が見える。
肌から煙が立ち昇っていく様は明らかな負傷なのに、ふらつくこともなく神田はしかと地に足を付けたままだった。
「な…なんでオレの弾浴びて立ってんだよ…ッ!?」
AKUMAの銃弾は、その中にAKUMAのウイルスが入っている。
生身の人間が喰らってしまえば即、死に至るもの。
それは私達普通の人間だけじゃなく、装備型のイノセンスを扱う生身のエクソシストも同じこと。
ただ一人、神田を除いて。
「さぁな。テメェが弱いからじゃねぇの」
肌から上がる煙が退いて、見えた肌には銃弾の跡なんて残っていなかった。
真意は答えず顔に冷たい笑みを浮かべたまま、神田が静かに六幻を構える。
そして。
ザンッ…!
「アが…ッ!」
一瞬にして振るわれる六幻の刃。
同時にAKUMAの首は胴体と切り離され、薄暗くなりつつある空に高く舞った。
「…よかった…」
その光景を確認して、座ったままゆっくりと地面に伏せる。
腕の中でもぞもぞと動くわんこは、どうやら健在らしい。
私とわんこを囲うように作られた透明なシールドは、咄嗟に私が起動させた結界装置によってできたもの。
どうやら結界はわんこを守ってくれたみたいだ。
──でも。
「キュフン…?」
心配そうに、わんこの鼻先が頬に押し付けられる。
それに上手く答えられなくて、私は力なく笑って返した。
ごめんね。
じわり
脇腹を押さえた手の隙間から溢れたのは。
AKUMAの銃で被弾して漏れた、私の血だった。