My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「モヤシ」
『ティム、理由だけでも───…今立て込んでるんですけどっ』
「左眼を使え」
『はい?』
「お前の左眼だ」
『AKUMAならいませんよ。既に調べ済みです』
「いいから使えつってんだろ。きな臭ぇんだよ」
ちりちりと肌に感じる違和感は、決して好意だけの視線ではない。
一斉に注目を浴びながら、そしてその気配を逐一察知できる神田だからこそ。
頭の隅に辛うじて引っ掛かったような、僅かな違和感に気付いた。
『全く、人使いが荒い…』
「AKUMAの気配は感じないであるが?」
「俺らがAKUMA(あれ)に気付くのは、敵意を向けられた時だ。殺人衝動を起こしてなけりゃ、あいつらは人の皮を被って紛れ込むことができる」
だからこそアレンの左眼は重宝されているのだ。
まるでサーモグラフィーのように、神田達が見えないAKUMAと人の魂を見分けることができるのだから。
「テメェが餌としてる人間の中に平然とな」
『…え…』
ゴーレムから零れるアレンの声。
それは神田の言葉に驚愕したものではなかった。
『AKUMA…?』
左眼を発動させたのか、そしてそれで何を見たのか。
呟くアレンの台詞に神田とクロウリーの神経が集中する。
「AKUMAが出たか(やっぱりな)」
「こ、こんな人が大勢いる中でであるかっ?大変であるッ」
「それで、AKUMAは何処だ」
『一体いつから…最初に見た時は、確かに人間だったのに…』
「おいモヤシ。どれがAKUMAだって聞いてんだよ」
『………』
「おいッ」
『…爵』
「あ?」
チャイナ風のロングワンピースの中に隠している六幻へと、忍ばせていた神田の手が止まる。
『リッチモンド伯爵が、AKUMAなんです』
それは予想だにしない人物だった。