My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
『聞き出せモヤシ。テメェにしかティムの言葉はわかんねぇだろ』
「モヤシじゃないですアレンです。それがティムが理由を教えてくれなくて…」
「僕らを呼んだってことは、その理由は君らの目的とは別物なんじゃないかい?」
「イノセンスとやらとは無関係ってことさ」
「じゃあ何故君達を呼んだんですか?」
「別物の目的って?」
「さあ。それは僕らにもわかり兼ねるよ」
「だから行って確かめるまでさ。さぁティム案内を!」
「ガァッ」
「だから待って下さいって!」
すらすらと流れるように告げてティムキャンピーと去ろうとする双子を、慌ててアレンが止めに入る。
理由はわからないが、現在雪は一人探索任務に就いている身だ。
そんな立場で易々と仕事を放棄する性格ではない。
『だから、状況を把握させて下さいってッ』
『その為に僕らを連れてけって言ってるだろ?』
『そうだぞ少年。聞き分けが悪いな』
『そっくりその言葉お返しします。そしてその呼び方は止めて下さいッ』
「…何やら大事になってきたであるな…しかし私達を求めていないのなら、重大な用事ではないのではないか?」
「重大じゃなけりゃ任務中に別件ぶっ込んだりするかよ、あいつが」
服の中に忍ばせた神田のゴーレムから溢れ出る、アレンと双子達のやりとり。
どうにも事が進まない状況に、神田は眉間の皺を深めた。
雪の仕事に取り組む姿勢は、真面目なものだ。
アレンよりも情に流されず適切な判断を下せる。
しかし神田よりも人情に傾く一面も持っている。
「(なんつーか…)…きな臭い」
「きな?」
口元を動かさぬよう細々とクロウリーと言葉を交わしながら、神田は感じる周りの視線に注意を払った。
舞踏会に踏み込んだ時から、常に視線は感じていた。
敢えて注目の的になるように着飾っているのだ、男達の好意ある視線を受けるのは当然のこと。
しかしそれがどうにも、聊か違和感となっている。
(なんだ、この気配…)
リッチモンドが現れる前には感じなかった違和感。
それを探るように、神田はじっと周りの貴族の群集へと気を配った。