My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
連れて来られたのは、狭い小部屋だった。
所狭しと衣類や小道具が並ぶ其処は、舞台裏の衣装部屋のようにも見える。
しかし並んでいる衣類も小道具も、ただ煌びやかに飾り立てるだけのものではない。
肌が透ける生地や下着同然の小さな面積の布地に、並ぶ小道具もまた性行為に使う為の卑猥なものばかり。
辺りを凝視する雪とは正反対に、リッチモンドは慣れた手つきで衣類を物色し始めた。
「さて、君は本日のメインイベントだからね。多少時間はある。私直々にお似合いの衣装を選んであげよう」
「っ…ま、だ…全部、聞いて…ない…!っゴホッ!」
「だから無理するなと…下手をすると声帯を潰してしまう。啼ける声がないと、興醒めする客もいるんだ。大事にしたまえ」
「だったら、答え、て…ッ此処、は、なに…っ」
「ふむ。君の体型では胸を主張する衣装は似合わないな…全体をアピールするものでいこう」
「っ答えて!」
「やれやれ」
代わる代わる衣装を当てていくリッチモンドに雪が吠えれば、その手はようやく止まった。
しかし徐にジャケットのベストを掴むと、ぶちりと乱暴にボタンを引き千切る。
「っ!?」
「全く、気品のない口だ。これだから庶民の出は」
「っ…」
「冥土の土産と言ったからには、きちんと持たせてあげよう。安心するといい。まぁこの先のことは、君自身で否応なく実感できるがね」
引き千切られたベストに、覗く下のブラウスへとリッチモンドの手が伸びる。
無造作に捲り上げられ外気へと晒される肌。
尚も胸を押さえ付ける為に巻かれたサラシを掴まれ、動かないはずの体を僅かに雪は硬直させた。
「ああ、安心したまえ。先程も言ったが、私は生きた肉には興味がない。君の裸を見ようとも興奮はしないよ」
躊躇なくサラシを剥ぎ取り顕になった雪の体を見定めるようにじろじろと見回して、しかし、とリッチモンドは肩を下げた。
「なんとまぁ傷だらけな体かな…女でここまで見栄えのない体は初めてだ」
「…っ…」
「黒の教団の者なら仕方ない、か?その程度の傷なら化粧で誤魔化せる、任せなさい」
つつ、とリッチモンドの指先が雪の胸の火傷跡を撫でると、ぞわりと嫌悪感に近いものを感じた。