My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「っ(一体どうやって…)」
「気になるかい?此処へ来れた君なら、答えを知ってるはずだと思うがね」
「(…まさか…)…ポリ、ジュ…?」
「ほう。柔軟に頭は使えるようだ」
その受け応えが充分な答えだった。
フレッドとジョージが見掛けたハグリッドのような男は、ポリジュース薬で姿を変えたリッチモンドだったのだと悟る。
「しかしまさか魔法界のことを知っているとは。君は隠れ魔女なのかな?」
「…ちが…」
「ふむ、だろうね。こちらの世界にもあちらの世界にも規則は存在する。安易に交わっていいものではない」
「…貴方、は…一体…?」
「私もただの人間さ」
「じゃあ、な…で…魔法、を…」
「あれは薬品の一部とでも思えばいい。それなら我々にも使えるだろう?」
リッチモンドの言うことは理に適っているが、果たしてそれは許される行為なのだろうか。
魔法界の番人である婦人を無断でホグワーツから持ち出した時点で、すでに犯罪染みている。
「一体…何、を…企んで…るの…」
「はは。まだそこまで話せるとは、大したものだ。良いだろう、冥土の土産に持っていくといい」
「っ…」
動かない雪の体を徐に担ぎ上げると、リッチモンドは檻の側に並んでいた車椅子にその身を下ろした。
「魔法界のことを知っているなら、人間を"マグル"と呼ぶことを知っているだろう」
投げ出された雪の足も丁寧に足置きへと乗せると、グリップを握りゆっくりと押し進める。
「では"スクイブ"という名称は知っているかね」
されるがままに運ばれる体は、一切自由が利かない。
力の入らない唇を噛み締めながら、雪は唯一機能している耳を澄ませた。
"マグル"という名は雪の本で学んだ知識にも入っていた。
今一度、ハリーポッターシリーズの記憶を引っ張り出す。
(スクイブ?スクイブ…)
マグルを兼ね合いに出すのならば、恐らくそれと類似した意味なのだろう。
揺れる頭で必死に思考を巡らせると、不意に答えは手繰り寄せられた。
それだけ本を読み込んでいたお陰か、偶々その情報が史実通りだったお陰か。
見開く目で凝視する雪の視線に、リッチモンドは微笑んだ。