My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
堪らず震える手で目の前の男の足首を掴む。
雪の行動に周りが驚く中、足を掴まれた男だけは微動だにしなかった。
「ほう。これだけの量を打たれてここまで動けるとは。随分と活きが良い」
「婦人…拐った、んでしょ…魔法界、から…っ」
「! し、喋った…」
「もしや薬が効いていないのでは…!」
「…いや」
慌てふためく者達を片手で制して、男の手が足を掴む雪の手を引き剥がす。
簡単に剥がれた手はぶるぶると震えを起こし続けていた。
「効いている。あの大男を倒す程の者だ、彼自身の力で足掻いているだけだろう。直に大人しくなる」
「ではそいつも、ですか?」
「ああ。見られてしまったからにはな。処分する他ない」
「っ…(処分?)」
視界は歪んでいるが、声は鮮明に聴き取れた。
処分とは、殺しを意味する言葉なのだろうか。
「見たところ若く活気が良いが、機能としてはどうかな。彼らは選り好みするタイプでね」
「っう…!」
「男なら男色者相手でも───」
雪の結ばれた髪を掴み乱暴に引き上げる。
そうして顔を覗き混んだ男は、不意に声を止めた。
「どうされました?オーナー」
「…こいつは男じゃない」
「え?」
「身形は男物で着飾っているが、中身は女だ。全く、女の腕でここまでしてくれるとはな」
まじまじと雪の顔を見ていた男の、髭を湛えた口元がつり上がる。
「女なら多少欠陥品でも見栄えはする。こいつは今日のショーに使おう」
「ショーに、ですか?ならこいつは…」
「ああ、そいつは他と同じ扱いで構わん。今回のメインはこの女だ」
「はっ」
「だとよ。助かったな、お前」
「ひぃ…っ」
蹲るようにして震え続けていた女性の鎖が引かれ、乱暴に引き摺られる。
止めさせたくても体はまるで反応を示さず、堪らず雪は顔を歪めた。