My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「なぁに?あの摩訶不思議な生き物は…魔法動物じゃないわね」
「私の世界で言うゴーレムだよ。特別製だけど。…にしても婦人、マグルである私相手に散々魔法界のこと喋ってたけど…いいの?それ」
ハーマイオニーとハグリッドには、雪がマグルであることは伏せていた。
其処が魔法界だったこともあるだろうが、気軽に魔法を他言していいことではないことは、雪も理解していた。
じとっと見れば、視線から逃れるように婦人が身を退く。
「し、仕方ないでしょう。貴女のことを伯爵と同じ者だと思ってたんだから。悪人に気遣いは無用だわっ」
「悪人、ね…(やっぱり私一人で探索して正解だったな)」
フレッドとジョージのこともあった為、万が一のことを考え単独でのイノセンス探索を名乗り出た。
もしそこで魔法の類を見つけてしまえば、アレン達にもホグワーツのことが知られてしまう。
その判断はどうやら正しかったようだ。
「それなら婦人。此処を通った人達のことは説明できる?」
「ええ、まぁ」
「その人達の中で変な人はいなかった?気になる物を身に付けていたり、婦人が言った摩訶不思議な物とか」
イノセンスに繋がるものがあるかどうか、少しでも情報を聞き出そうとする雪に、婦人は考えるようにキャンバスに描かれた空を見上げた。
「そうね…変な生き物は見なかったけれど、此処の参加者は皆一様に不気味な眼をしていたわ」
「不気味な眼?」
「あれは…言うなれば、吸魂鬼(ディメンター)に魂を吸われた廃人のような眼とでも言うのかしら…」
「アズカバンの看守をしてる、あのディメンター?」
「あら。マグルなのに随分と物知りね。ウィーズリー兄弟に教えてもらったの?」
「あー…うん、まぁ。そんなところ(本当はハリー・ポッターシリーズを読んで知ったんだけど…あれ、本当の記述だったんだ…)」
凡そ人のようには見えない、全身を真っ黒なマントで覆った影のような存在、吸魂鬼(ディメンター)。
その者に接物をされると口から感情を吸い取られ、廃人のようになってしまうと言う。
その恐ろしい能力から、魔法界の刑務所アズカバンの看守を担ってきた。
本当にそんな存在がこの世に存在すると思えば、僅かに鳥肌が立つ。
介入しない世界だとわかってはいても、身震いはするものだ。