My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
雪の口から飛び出した双子の名に、ぴたりと婦人の忙しない口が止まる。
「今、なんと言ったの?貴女」
「婦人は、ホグワーツから盗まれた絵画なんでしょ?私、フレッドとジョージっていう双子の魔法使いに出会って───」
「ウィーズリー兄弟?あの双子が此処に来てるのッ?」
「あ、姓はウィーズリーなんだ。それは知らなかったけど。赤毛に緑目の双子だよ。背の高い」
「やっぱり!」
両手を合わせる婦人が、今にもキャンバスから飛び出さん勢いで顔を寄せてくる。
思わず一歩後退りながら、それでも雪も笑顔を返した。
彼女が魔法界の存在だと知れば、動く絵画とて不思議ではない。
恐怖は薄れ、双子の捜していた者を見つけられたことに安堵する。
「あの双子、会ったらただじゃおかないわ!」
「え、そっち?」
しかし婦人は違ったようだ。
キィ!とワンピースの端を咥えて憤慨する様は、どうやら彼らに怒りを覚えているらしい。
「赤毛の双子からホグワーツへの忍びの道を教えて貰ったのだと、伯爵は言っていたもの!絶対にフレッド・ウィーズリーとジョージ・ウィーズリーよ!私がこんな所にいるのは、あの双子の所為だわ!」
「じゃあやっぱりリッチモンド伯爵が…でも、フレッドとジョージは婦人を助けに来たんだよっ仲間の心配を蹴ってまでっ」
「…そうなの?」
「うん。自分達の所為で起きたことだから、自分達で責任を持つって。ハーマイオニーやハグリッドに止められたけど、それでも危険を侵して此処に来た。だから二人を責めないであげて」
「…貴女…もしかして、魔女?」
「ううん。私はただのマグルだよ。偶々双子の事情を知ってしまっただけ」
まじまじと興味深く見てくる婦人の視線を受けながら、雪は苦笑混じりに首を横に振った。
やっと落ち着いてくれた婦人の声色に、ほっと息を零す。
「此処で婦人を見つけられたのも、何かの縁だし。私が助けてあげる」
「…マグルであるなら無理な話だわ。私はこの場に魔法で縛り付けられているの。それを解かない限り、此処から離れられないのよ」
「そんなこと一体誰が…リッチモンド伯爵?あの人も魔法使いなの?」
「さぁ、それは定かではないけれど…」
そっと己の腕を抱いて、婦人は身を縮めた。
「あれは末恐ろしい男よ」