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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



「───うーん…此処にもそれらしい物は見当たらないなぁ…」

「ガゥ…」

「まさか本当にガセだったとか?…舞踏会だけ楽しんで帰ったら、流石にコムイ室長に怒られそう…」



奥の芸術の間へ赴けば、掘り起こされたであろうミイラや、有名な殺人鬼の実用ナイフなど、金に物を言わせて手に入れたような珍しい品々が展示されていた。
しかし珍しさはあっても異質さはない。
長年ファインダーとして様々なイノセンスに関わってきただけに、それがイノセンスであるかどうか、雪にも多少の目利きはある。
だからこそ空振り感の否めない展示物に、雪は溜息混じりに肩を落とした。
本当にガセであれば、これだけのエクソシストと時間を割いたのに、とコムイに詰られなくともフェイ辺りに文句は言われるだろう。



「集団のAKUMAを昇華した成果は、アレン達の任務だったし───…?」



空振りを覚悟し掛けた時だった。
不意に人の気配を出入口から感じ、さっとミイラの影に身を隠す。
微かな照明に影が差す。
声もなく静かに踏み込んできたのは、貴族であろう身形の男女二人。
こつりこつりとヒールが静寂に鳴り響く。



(舞踏会の客?なんで此処に?)



リッチモンド自慢の芸術品でも観に来たのだろうか。
しかし男女は飾られた品には目も暮れず、広間の奥へと進んでいく。
一番奥にはミイラの展示品。
そこに身を潜めている雪は、緊張気味に息を殺した。

しかし足音は間近に迫ることはなかった。
ミイラの展示手前で、男女は右へと逸れていく。
ほっとしたのも束の間、迷いなく男女が進んだのは墓標が並ぶ展示場。
しかし興味を示したのは墓標にではない。
その後ろはただの壁であるはずなのに、展示場の裏に回るとするりと壁の切れ目に入り込むかのように消えていったのだ。

思わず目を見張る。
人の気配が消えたのを確認すると、雪はミイラの影から飛び出した。

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