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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



「ほう。君はあのクロウリー一世の孫なのか…!」

「彼の名声は祖父によく聞かされたものだ。まさかその血筋に出会えるとは」

「そ、そうなのであるか…?」

「勿論。人目を避ける傾向はあったが、実際に会ったことのある祖父は実に良い人だったと言っていたよ」

「もっと彼の話を聞かせてくれないか?」

「も、勿論である…!」



クロウリーの周りを囲む人集り。
それは彼にダンスを申し込む女性ではなく、裕福そうなドレスコードの貴族の男達だった。
アレイスター・クロウリー三世の存在自体は幅広く知られていないものの、彼の祖父の名は偉大であったらしい。
孤城で一人、ひっそりと人目を避けて暮らしていたクロウリーには経験したことがないものだ。
尊敬していた祖父のことを褒め称えられ、頬が赤らみ帯びる。

其処にはエクソシストとしてのクロウリーではなく、一貴族としてのクロウリーがいた。



「クロウリー、すっかり舞踏会楽しんでますね…」

「楽しめてることは良いけれど、神田は?」

「そういえば何処に───…げ」



クロウリー同様長身でありながら、一際目を置く美女と化した神田。
その姿は誰よりも見つけ易く、そして誰よりも問題と化していた。
思わず呻いた雪の視線の先には、またも人に囲まれている神田の姿。



「ぜ、ぜひ私めと一曲踊って頂けませんか…!」

「ええい、私が先にお誘いしたんだ。横入りするな!」

「君ら、彼女の意見を丸無視じゃないか。どうですか、私と一緒に食事でもしながら軽く話でも?」



クロウリーとは違い、周りを囲むのは高揚と頬を染めた貴族の男達。
黙り込んで壁際に立つ神田に対し、これでもかと熱い視線を送っている。



「うわぁ…モテモテですね、神田」

「仮面付けてても美人って伝わるのね…流石」

「あちゃ…クロウリーが離れたから、フリーだと思われたんだ…」



いつもなら女扱いされた瞬間に罵声と暴行を容赦なく落とす神田だが、流石に任務とあってはそうもいかない。
熱いアピールの男達に目を暮れず、口を固く結んで俯いている。
しかしぷるぷると震える体は余程限界なのだろう、暴君と化さない方が奇跡だ。

ぺちりと額に手を当てて、雪は大きく肩を下げた。
万が一神田が憤怒してしまえば、計画は水の泡となってしまう。

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