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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



「今宵の宴は仮面舞踏会。皆様、日頃の顔など気にせず!仮面という素顔で心ゆくまでお楽しみ下さい!」



高らかに告げるリッチモンドに、高らかな拍手が沸き起こる。
気楽に、という意味合いもあるのだろう。
緩やかに楽しげな音楽が流れ出すと共に、場の空気も緩んだように感じられた。



「流石、この街一番の大富豪。めいいっぱい自分を曝け出せってさ」

「フム。なら遠慮なく僕らの務めを果たさせてもらおうか」

「あっ」



雪の手から離れる二つの背。



「じゃあ、ユキ。それに少年少女達」

「伯爵はあれでいて抜け目ない人物だ。気を付けたまえ」



ひらりと片手を振って去る双子は、颯爽と去り際早く。
雪達が声を掛ける暇もなく、人混みの中へと消えていった。



「だから少年呼びは止めて下さいって言ってるのに…」

「私も少女呼びされちゃった…」

「あはは…あの二人、おちゃらけてるから」



ぷるぷると拳を握るアレンに、まぁまぁと苦笑混じりにフォローを被せる。
何故そうも少年呼びを嫌うのか、雪にはわからなかったが、リナリーは知っているらしい。



「まぁ、そんな呼び方をする人も沢山いるよ」

「…そうですけど」



気にしないで、と彼女が笑い掛ければ、不服そうにしながらも渋々と頷くアレン。
それは二人の間に結ばれている絆の形のようにも見受けられて、雪はつい顔を綻ばせた。



「じゃ!私達も。リッチモンド伯爵が姿を見せたし、仕事に取り掛からないと」



その思考を切り替えるように、パンと手を打ち声を上げる。
この屋敷の主はジョージの言う通り、山程いる使用人の顔も山程ある芸術品も把握している男。
彼をアレン達が監視する間に、雪が屋敷内でイノセンスと思わしき物の捜索にかかる。
今回の任務はそんな算段となっていた。



「屋敷の外はトクサに任せてあるし。出入口はリンクさんとテワク担当。アレン達は伯爵の傍ね」

「はい」

「任せて、雪」

「それでユウとクロウリーは───」



一層目立つ二人は惹き付け役。
囮となるべき二人は何処にいるかと視線を巡らせた雪達が、見たもの。



「…うわ」

「あれ?」

「なんですか、あの人集り」



それは。

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