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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



「仕方ないなぁ。アレン君、神田を助けてくれる?」

「え?僕?」

「…なんでそんなに嫌そうな顔なの」

「い、いえ。嫌じゃありませんけど…っ」

「いいよ、アレン」



こほん、と咳払い一つ。
男性の声色であることを確かめながら、一歩先に踏み出したのは雪だった。



「私、行ってくる。アレンとはリナリーを壁の花にしないよう、約束させたしね」

「雪さん…でも、」

「それに言い寄られる気持ちは少しわかったし。助けてくるよ。二人はリッチモンド伯爵の監視頼んだからっ」

「あっ」



苦笑混じりに神田の下へと向かう雪に、アレンの声が掛かる暇もなく。
小走りに雪の背は、神田へと集る人の群に消えた。










「───あの、」

「私が最初に声を掛けたんだ!」

「フン。そんな証拠どこにある。私が一番だったに決まっているだろう」

「あ、あの…っ」

「やれやれ煩い連中だ。彼女も困っているだろう?」

「そういうあんたの誘いを一番迷惑がっているんじゃないか?」

「あのぉ…!」



分厚い人の壁と化している貴族の男達に、必死に声を掛けようと誰も雪の声に聞く耳を持たない。
これではいくら神田の連れだと申し立てても、助け出すことはできないだろう。
ぴょこぴょこと人集りの周りを飛び跳ねていた雪は、やがて諦めの溜息をつくと意を決して分厚い壁に挑んだ。



「失礼!」

「うん?なんだ?」

「ちょ、っと通して下さいね…うっ」

「横入りするな小僧っ」

「すみませんね…!もがっ」



高級レザーや高級生地の服に押し合い圧し合いされながらも、なんとか神田の目の届く所まで身を押し込む。
ドンと背中を誰かに押されて思わず傾いた体は、不格好に地面に着地した。



「あダ!」



塵一つない大理石の床に顎からダイブ。
堪らず顎を押さえて身を震わせていると、ばちりと俯いていた神田と目が合った。



「お前───」

「っぁ、あの!」



神田の声を聞く暇もなく。
痛みに耐えながら地面に転がったまま、咄嗟に片手を差し出す。



「私とダンスをお願いします!」

「「「…は?」」」



ずずいと申し出る雪の姿に、やんやと言い合っていた周りの男達の目が止まった。

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