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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



「へぇ。誰かな?そのヤな人って。気になるなぁ少年」

「僕らに似てジェントルマンなのかい?少年」

「…何この小馬鹿にされてる感じ。もう一回足踏ん付けていいですか」

「あーハイハイ!アレンをからかわないで。二人には二人の仕事があるでしょーがっ」



ジェントルマンなんて程遠い、という言葉もしっかりと付け加えて。
アレンを庇うようにして立つ雪に、後方から視線が突き刺さった。



「というか雪さん、その人達と知り合いなんですか?」

「え?…アレン気付いてないの?」

「? 何が?」

「ごめん雪、私もわからないんだけど…」



振り返れば、不思議そうな表情をした顔が二つ。
どうやらアレンとリナリーは、この貴族に扮した二人が赤毛の双子だと気付いていないらしい。



「そりゃあ僕らの変装が完璧だからね。なぁ兄弟」

「赤の他人だと思っても仕方ない。ああ兄弟」

「二人は例の赤毛の双子だよ。フレッドとジョージ」

「え!あの二人!?…うわ…全然気付かなかったです…」

「わ、私も…完璧な変装ね。そういう仕事でもしてたの?」

「いや、特にそういうのは」

「僕らの仕事は、ほんの少し物事にスパイスを振り掛けるようなものさ」

「スパイス?」

「相変わらずラビみたいなこと言う変な人達ですね…」



にっこりと笑うフレッドの言葉に、彼らより雪が冷や冷やしてしまう。
そんな軽率な発言をして魔法の類が悟られてしまったらどうするのか、と。



「い、いいからホラっもう行って。お互いの仕事の邪魔はしないって約束だったでしょッ」

「別に邪魔はしてないだろ?寧ろユキを助けたんだし」

「そうだぜ、感謝状貰ったっていいくらいだ」



ああ言えばこう言う。
相変わらず口の達者な双子の背をぐいぐいと押しに掛かると、急に広場に歓声が広がった。
何事かと向けた雪達の目に映ったのは、広場の中央階段を降りてくる一人の男性。
艷やかなオールバックに仕上げたシルバーブロンドが、シャンデリアの光に栄える。
上質なネイビーの燕尾服を身に纏う、この屋敷の主。



「紳士淑女の皆様。今宵は我が宴に足をお運び頂きましたこと、心から感謝申し上げます」



ウィリアム・リッチモンド。
雪達が待ち続けていた男だ。

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