My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「ち、ちょっと、何して…っ」
「おや?ユキ嬢は恥ずかしがり屋なのかな?」
「というか、そんなこと普通日常でされないからッ」
「此処は舞踏会だろ。映画でこういうの観ててさ、一度やってみたかったんだ♪」
「これくらいで照れるなんて、案外可愛げあるんだな」
「案外って何!」
「じゃあこれは?」
「わっ」
ニヤニヤと笑うフレッドに抗議を申し立てようとすれば、唐突に引き離される。
ぐっと腰に添えた手に引き寄せられ、片手を掴むようにして握られた。
間近に迫る顔は、同じく口角を引き上げニヤけ笑うジョージ。
「また変な男に絡まれないように、僕らがお相手しようか。Shall we dance?」
「の、ノーサンキュー!てか今の私男だし!」
「問題ないさ、ユキのチャーミングさがあれば。ほら、そんな退け腰じゃステップも踏めな」
ガンッ!
「っっ!?!!」
ニヤけるジョージの笑い顔を止めたのは、足の甲に落ちた重い衝撃。
踏み付けたのは見知らぬブーツ。
「ノーサンキューって言ってます」
悲鳴も儘ならず足を押さえて悶えるジョージに、降り掛かる冷ややかな声。
それは雪のものではなかった。
「ぁ…アレン…?」
雪を庇うようにして立っていたのは、ナイトグリーンの燕尾服に身を包んだ少年。
呼ばれて振り返る姿は、やはり彼だ。
しかしいつもの穏やかな雰囲気はそこにはない。
「だから言ったでしょう雪さん。一人でいたら駄目だって」
「大丈夫?なんだか絡まれてるのが見えたから」
「リナリーも…それでわざわざ此処に?」
そっと肩に手を添えられ振り返れば、其処にはリナリーの姿もあった。
最後に二人の姿を確認した時は大分離れた場所にあったが、どうやら気を引き止めさせてしまったらしい。
「だからって、これはないんじゃないか…イテテ…」
「暴力的なのはあの長髪の色男だけじゃなかったのか…流石ユキの仲間」
「なんですか、流石って。貴方達には僕らの仲など関係ないでしょう」
「おや、随分と冷たいな少年」
「優しい外面は女性に対してだけかい?少年」
「…その呼び方止めてくれませんか。すっごくヤな人思い出すんで」