My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
左右からそれぞれ雪の手を引く、銀のマスカレードマスクをした青年二人。
明るいブラウンの髪に見覚えはないが、彼らの独特の雰囲気には憶えがある。
それでも確信には至らず、小走りについて行きながら雪は恐る恐る口を開いた。
「…フレッド?」
「ん?」
「ジョージ?」
「やぁ」
呼べば、足早に大理石の床を進んでいた二人の足が止まる。
振り返りさも当然のように応える姿に、ようやく雪は安堵の表情を見せた。
「二人だったんだ…」
「なんだ、気付いてなかったのか?」
「それなのに僕らについて来るなんて。駄目だぞユキ、貴族ってのは道楽に託つけた変な趣味嗜好の持ち主も多いんだから」
「予想してたよ、半分は。ハーマイオニーの名前出してたし」
彼女が此処に?と問えば、息ぴったりに首を横に振られる。
予想していた応えに、雪はやはりと肩を竦めた。
此処に彼女が居ようものなら、双子は恐らく自由に広間を歩かせて貰えないだろう。
「まさか舞踏会にも来てたなんて」
「舞踏会だから、さ」
「ユキだってそこを狙ってきたんだろ?」
「…流石、他人同盟」
灯台下暗し。
考えることは同じだったらしい。
「でも声も背丈も髪型も違うから、パッと見てわからなかったよ」
「そういうユキだって、声も背丈も髪型も違うだろ」
「私は小道具を使ってるからね。二人は…もしかして、魔法?」
「ビンゴ」
「ポリジュース薬を使ったのさ」
「あ、それ知ってる!ジュースに対象人物の体の一部を入れると、その人そのままに変身できるっていう…っ」
「ウム。ポッタリアンユキは健在のようだな」
「正にその通り」
ハリー・ポッターシリーズでも有名な、魔法薬であるポリジュース薬。
本物の効果を前に喜びを隠せない雪の姿に、双子は満足そうに頷いた。
「じゃあ二人は本物の貴族にでも?」
「これまたビンゴ」
「ちょいと身分を拝借したまでさ。だからユキも我らを貴族として扱ってくれたまえ」
恭しく一礼するフレッドが、雪の手を下から掬い取る。
そのまま手の甲に口付けを落とすものだから、慌てたのは雪だ。