My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
アレン達に、自分は誘われまいと豪語していた。
それがまさかこんな形で誘われるとは。
(やっぱり貴族って変!)
雪自身、男色の気がある者を嫌っている訳ではない。
それも一つの愛の形だと認めよう。
しかし自分は既に好意を抱く相手がいるし、そもそもが男ではない。
「すみません。あの、私にそういう気は…」
「そういう、とは?」
「………」
思わず押し黙る。
嫌味な問いだと口を結べば、相手は気にした様子なく微笑みを称えているだけ。
ここで男色のことを口にしても相手が否定すれば、分が悪くなるのは雪だ。
目的は内部調査、目立つようなことはしたくない。
どうすればこの場を穏便に逃れられるか、考えあぐねる。
未だ握られたままの手を振り払うこともできず、ぞわりと鳥肌だけを立たせた。
「やぁ!こんな所にいたのか」
「捜したよ!」
後方左右からひょこりと知らない顔が覗き込んだのは、そんな絶妙のタイミングだった。
銀のマスカレードマスクをした、ブラウンの髪色をした青年が二人。
両側から雪の肩を掴み、にっこりと笑っている。
「…君達は?」
「彼の友人です」
「この舞踏会に赴くと聞いたので、捜していたんですよ」
「わ、私は…」
「さ、ユキ。君に紹介したい人がいるんだ。行こうっ」
「ハーミーのように知的な女性だ。きっと気に入るぞ」
「!」
聞いた名に、抗おうとした雪の口が止まる。
また知らぬ厄介人に絡まれては堪らないと思ったが、思わぬ救世主だったらしい。
雪の手首を握り引く青年に、するりとクロフォードの手から抜け出した。
「すまんが君達、今は私が話しているんだ。そのような態度は───」
「失礼だと?」
「それは申し訳ない。ですが、男爵殿」
不満を申し立てるクロフォードに、息ぴったりに深々と上品に一礼。
「此処は舞踏会。ダンスでお相手をお探しすることですね」
「仕方ないさ兄弟、ユキはチャーミングだ。節操のない雄だって魅了するんだろう」
「な、なんだその言い草は…ッ」
「おっと、これは失礼」
「それでは!」
「わ…!」
素早く彼らに手を引かれ、その場を駆ける。
残されたのは、憤慨で顔を赤くする男のみ。