My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「貴族って、なんていうか…変な人多いね」
「ガァ」
『ピ〜』
「よく言えば個性的な、ね。私みたいな凡人にはわからない世界かも───」
「やぁ」
「!」
声を掛けられたのは唐突だった。
驚き振り返った雪の裾の中に、再び身を隠す二匹のゴーレム。
「君、見ない顔だね。舞踏会は初めてかい?」
「はい…まぁ、(見ないも何も、仮面で顔はわからないのに)」
背後に立っていたのは、一人の中年男性だった。
裕福そうな衣装に身を包み、両手の指には煌く宝石の付いた指輪の数々。
鮮やか過ぎる程眩しいゴールドのオールバックに上品な口髭は、この屋敷の主を思い起こさせる。
しかし知らぬ貴族だ。
「何処の名家の出なのかな?」
「え。あ。…ええ、と…私は、大層な階級の者ではなくて…成り上がり、なもので…」
「ほう。名は?」
「…月城です」
「おや、珍しい名だね。アジアの者かな」
「はい」
「私はクロフォード。人は男爵と呼ぶが、気軽に名を呼んでくれたまえ」
一体次はどんな変人なのかと構えたが、物腰柔らかく笑みを携えてくる姿は親切な男性だ。
「私には一人息子がいてね。まだ舞踏会には連れて来られない年齢なんだが…だから君のような若者を見かけると、放っておけないんだ。どうだい、初めての舞踏会は。楽しめているかい?」
「はい。少し、戸惑うところもありましたが。豪勢な催しですね」
「はっは、所詮貴族の道楽さ。美味いものを食べ美味い酒を飲む。最初はそれだけ楽しめればいい」
煌く指輪だらけの手を差し出され、握手を交わす。
ゴールドの髪はリッチモンドのシルバーブロンドに比べれば、些か目に眩しい。
(そういえば見たことあるなぁ…)
思い出せば、ふと過ぎる。
白に近い上品なシルバーブロンドは、何処かで見たことがあった。
リッチモンドのような中年男性ではなく、もっと若い青年のような。
リッチモンドのような白い肌ではなく、濃い褐色の肌のような。
リッチモンドのようにかちりとワックスでまとめられた髪ではなく、癖のあるふわりと柔らかい髪のような。
(…誰だったっけ)
しかし思い出せない。