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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



「うぇっぷ…」



適量以上の香辛料を口にし、ヒリヒリする舌を突き出しながらゴミ箱から顔を上げる。
ばんばんと机を叩いて笑い堪えている少女を、雪は恨めしく見上げた。



「酷くない…それ…」



霞んだ声で抗議すれば、きょとんと少女の青い目が二つ。
雪とタバスコメロンを交互に見た後、再び大口でもぐもぐと咀嚼する。
雪とは違い、平然とパクつく彼女はやはり少し変わっているらしい。
ごくんと嚥下して、首を傾げる。
不思議そうにしながらも、雪が抗議を申し立てている理由は理解できたのだろう。
シャンパングラスに水差しを傾けると、雪の隣に身を屈めてズイと差し出してきた。



「それ、ただの水?」



こくりと頷き。



「本当に?」



にんまりと笑う口。



「…ありがと」



貰った水を口に含む。
ほっと一息つく雪の様子を、少女は声もなく見守っているだけ。



(見た目より子供っぽい子なのかな…悪気があった訳じゃないみたい)



自分が好きなものを好意でくれただけなのだろう。
笑われもしたが、純な子供のようなものだと思えば責める気にはならない。

まじまじと見つめれば、きょとんと見返してくるマスクの下の青い瞳。
なんでもないと首を横に振れば、へらりと返ってくる緩い笑み。
なんとも言えない無垢さを感じれば、可愛らしくも見える。



「君、一人?」



喉の痛みも取れ、改めて少女に尋ねる。
首を横に振るところ、親と訪れているのだろうか。
しかし少女の身近に、それらしい人物は見たらない。
どうにも自由人に見える少女のこと、一人で好きに行動しているのだろう。



「じゃあ同伴者が来るまで、どうかな。私も暇してるから…」



ついでに何か情報収集ができればと誘う雪の肩に、ぐっと力が入る。
痛みさえ感じる程の強さに振り返れば、肩を掴む手が一つ。



「うちのになんか用?」



口元は笑っているが、ビシビシと肌にあからさまな敵意が伝わってくる。
肩を掴んで問い掛けてくるは、マスクをした見知らぬ男。
どうやら少女の同伴者は親ではなく、目の前の同じ年頃の彼だったようだ。

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