My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
傍目にそう見える訳ではない。
テワク達を見守る雪は、確かに楽しそうだ。
しかしそこで今一歩目を止めてしまうトクサは、他人の気を探れるからこそ。
微かにしかわからない雪の纏う空気に、見えないように吐息をつくとその手から細いグラスを取り上げた。
「あっ」
「一人其処でニヤけてるととんでもなく気持ち悪いですよ。気持ち悪く突っ立ってないで、貴女の大好きなタダ飯もありますし行ってきたらどうですか」
「何気持ち悪く突っ立ってるって。立ってるだけで罪なわけ…って待ってトクサッ」
「待ちません、外の調査がありますので。これはそんな努力家な私への細やかな褒美ですよ。貴女は料理でも食べてきて下さい、豚のように」
「豚のように。」
「ええ豚のように。幸いお供もいるでしょう」
「お供?」
「ガァっ」
「…ティム?」
さも呼ばれたかのようにぴょこりと雪の肩から顔を出したのは、金色のゴーレム。
そこに雪の目が向いた一瞬の隙を突いて、早々とトクサは硝子扉の向こう側へとするりと抜けていった。
「あっ(逃げられた!)」
「ガゥ?」
「あ、ううん…ティムは悪くないよ。でもなんで此処に…」
「ガフガフ」
「…先にタダ飯食べてたんだね…」
「ンガゥ♪」
丸いボディを更に膨らませ、もぐもぐと何かを咀嚼している姿はどうやら食事中らしい。
一足先に料理を堪能しているティムを目に、雪も苦笑混じりに頷いた。
「まぁいっか。折角だし」
こんな機会はまたとない。
折角豪華な料理が無料で頂けるのだ、味わわずは損だろう。
「アレンに食べ尽くされる前に食べよ。ティムも来る?」
「ガ♪」
返事一つで頷くゴーレムをお供に、雪はバイキング形式に料理が並べられている立食場へと向かった。