My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「アレン君、ダンス上手だね」
「ステップなら、色んな技術をサーカス見習い時に叩き込まれましたから。これくらいなら、」
「そうなんだ…わ、っ」
「っと。大丈夫?」
「う、うん」
軽やかにステップを踏むアレンとは反対に、不慣れなのか覚束ない足取りのリナリー。
それともアレンの近過ぎる距離がそうさせるのか、一歩踏み外すとバランスを崩してしまった。
倒れそうになるリナリーを抱きとめて、アレンが間近に覗き込む。
マスクをしていても、互いから滲み出る甘酸っぱい雰囲気。
リナリーの頬は恐らく化粧以上の赤みを帯びているだろう。
(アレン、ナイス)
これまた心の内でガッツポーズ、アレンにエールを送る。
「後は───…」
残す一組は、同じ中央庁出の者。
こちらはアレンに比べて見つけるのに苦労するかと思えば、案外あっさりと見つけられた。
理由は恐らく、
「…リンクさん、様になってる」
ぴしりと姿勢正しく、それでいて且つさり気なくテワクをエスコートするリンクの見事な手腕っぷりだろう。
「テワク、手を」
「っ…わ、わかってますわ…」
差し出された手を握るテワクの反応は、どこかぎこちない。
腰に手を添え、傍から一時も離れず、周りの人混みもテワクの邪魔にならないよう誘導している。
そんなリンクの完璧さに、テワクは付いていくだけで精一杯のようだった。
「いや、あれはリナリーと一緒だな」
顎に手を当て、じぃっと観察しながら頷く。
舞踏会に不慣れなだけではない。
あんなにこの場を楽しみにしていたテワクだ、その身をぎこちなくさせるのは、恐らくリンクに対して。
「(テワクはマダラオに懐いてるとばかり思ってたけど…そういえばリンクさんとも知り合いみたいだし)………新たな春かな?」
もしや中央庁にも甘酸っぱい恋が芽生えていようなどと。
「な訳ないでしょう黙りなさい」
「ぅわッ」
むむっと目を光らせる雪を冷たい声で一蹴したのは、隣に立つトクサだった。
今の今まで姿などなかった彼は、一体何処から現れたのか。
思わずズサリと後退る。