My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
膝まで隠す長いジャケットは前後左右に切れ目が入っており、ユーモラス溢れるデザイン。
黄と白を主体にしたジャケットの下には紺色のシャツにズボン。
アレン達のポイントとなっているハーリキン・チェックも勿論ジャケットの隅に刺繍されている。
「お揃いの帽子まで付けられて。よかったですねぇ」
「…仕方なくだ。ウォーカーの監視を傍で行うなら、同じに模した方が潜伏し易い」
「それでも私ならごめん被りますが」
ジャケットと同じ色合いの帽子は派手過ぎず立派な正装だったが、いつも中央長の赤い監査官の制服をきちんと着こなしていたリンクを思えば物珍しい姿だ。
それに比べトクサは何処にでもいるような黒い燕尾服。
外見からも何を言おうと言い訳にしかならないと悟ったのだろう、リンクは早々と口を閉じた。
「さて、じゃあ残るはテワクの髪を飾り…あれ?テワクは?」
「そういえば見掛けませんね」
「何処に行ったんだろう?」
「別の部屋にいるのかも。ちょっと見てくる」
テワクにと用意した髪飾りを手に、開放型の部屋の出口へと雪が向かう。
広いホテルの部屋の何処にテワクは隠れたのか、今更照れでもきたのだろうか。
(ツンデレ発生したのかな)
ツンのデレなテワクのこと、本番間近になって態度が気持ちと反比例したのかもしれない。
「テワクー…あ。」
部屋を見て回っていると、ソファの置かれた一室にその姿を見つけた。
チャイナ服型のドレスを身に纏う後ろ姿。
雪の声に気付いた顔が振り返る。
露出の高いリナリーとは相反し、きちんと襟元まで止められたチャイナドレスは上品な造りをしていた。
真っ白な生地に金箔の胡蝶蘭の刺繍が美しい。
手元や控えめに入った足のスリットにはフリルがあしらわれ、露出は高くなくとも充分に女性の魅力を引き出していた。
そして何よりも目を奪われるのは、ドレスを纏う女性そのもの。
派手な髪飾りは付けずサイドの髪を残して後ろにまとめたシニヨンヘアは大人の上品さがある。
化粧で華やかな顔は、肌に影を落とす長い睫毛に果実のような赤い唇。
思わず溜息が零れそうな程に美しい。
雪もまた見惚れそうになりながらも、笑顔で彼女へと歩み寄った。