My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
燕尾服と同じデザインだが、纏う色は黒ではない。
ぱっと目に映える鮮やかなナイト・グリーン。
同じナイト・グリーンのブーツを履きこなし、首元には真っ赤な蝶ネクタイと人を選ぶような服装をしているが、それは見事にアレンらしさを引き出しながらの礼服となっていた。
燕尾服の裏側に覗くはグリーンとホワイトのハーリキン・チェック。
リナリーと並べはお互いが手にした棒付きのマスカレードマスクも重なり、揃いのペアのようにも見えた。
「アレンもその格好、似合ってるよ」
「本当ですか?」
「うん。可愛い」
「…可愛い、ですか?」
「うん」
「格好良いじゃなくて?」
「格好可愛い」
「…可愛いは外せないんですか」
「うん」
にっこりと頷く雪に、嬉しいような嬉しくないような。
複雑な心境でアレンは苦笑を返した。
「僕はクロウリーみたいになりたかったけどなぁ…」
そうしてぽそりと呟いた先は、長いマントを羽織る吸血鬼。
高い身長を活かし、黒いタキシードにマント姿のクロウリーはスマートに正装していた。
アレンやリナリー同様、マントの裏側にはハーリキン・チェックの刺繍があるが黒にグレーの模様はシックで大人びている。
白と黒の髪はワックスでオールバックにまとめ、切れ目に鼻筋の通った細身の顔立ちは目を惹く。
黒く長いステッキを片手に立つ姿は、まるで公爵のようだ。
「そうであるか?私にはアレンの方が格好良く見えるが…」
「そんなことないですよ。僕、クロウリー程の身長も雰囲気もないし」
「それでも私には格好良いであるよ。アレンは誰よりも格好良い男である」
「クロウリー…っ」
それは単なる褒め言葉ではない、クロウリーの本心だった。
愛する人を殺してしまった意味に理由と、一生出られないと思っていた孤城から踏み出す一歩を与えてくれてた彼は、クロウリーにとって何者にも勝る男なのだ。
クロウリーの言葉に歓喜感動するアレン。
「はぁ…まるでお遊び気分ですね」
それを見るリンクの顔は呆れもの。
「おっと。貴方がそれを言いますか?」
「………」
しかし鼻で笑うようなトクサの言葉に、ぴしりと呆れ顔も固まってしまった。
それもそのはず。
リンクもまたアレン同様、個性的な礼服を身に纏っていたからだ。