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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



✣ ✣ ✣ ✣


「リナリー、じっとしてて」



ぱちりと開いた目の縁に並ぶ睫毛に、マスカラを重ねていく。
天井に向かって伸びる長い睫毛は、より大きな瞳を印象付ける。
何度か重ね付けを繰り返した後、雪は満足げに笑った。



「うん。よし」



長くウェーブを描く睫毛の下には大きな黒い瞳。
肌はファンデーションで整えられ、薄らとチークを乗せた頬に光沢感のあるリップジェルを纏う唇。
目元を飾るアイシャドウはほんのりとラメを混ぜたピンク系統。
美少女であるリナリーを更に美しく惹き立てているのは、その化粧だけではなかった。



「こちらも仕上がりました」



丸椅子に座ったリナリーの頭を弄っていたリンクの手が止まる。
ボブカットの髪は敢えて手を加えず、右サイドに白薔薇と紺紫色のリボンを飾り付けた。
両肩を大きく露出している彼女の服は、ピンクと紫を基調にしたドレスだ
至る所にフリルが備え付けられているが、リナリーの魅力の一つである美脚は惜しげもなく出し切った前開きのもの。
背後左右を囲うベル型のフリルスカートがふんわりと可愛らしい印象を与えてくる。
全体のポイントとなっているのは、胸元とスカートの裏側を飾るハーリキン・チェックだ。



「ど…どう?」



身支度を整えたリナリーが、丸椅子から腰を上げ雪を見つめる。
任務中の為ダークブーツは脱げないが、結晶型となり真っ黒な靴から鮮やかな真紅のパンプスへとフォルムチェンジした彼女のイノセンスは、ぴったりとドレスにマッチしていた。

どこからどう見ても、



「「凄く可愛い」」



としか言いようがない。

ぐっと親指を立てて真顔で言い切る雪と重なったのは、これまた真顔で言い切るアレンだった。
呆気に取られた面持ちでリナリーを見ていたが、自分が言った言葉に気付いたのか、彼の顔もまたチークを乗せたように色付いた。



「あっあの、その…っ」

「そ、うかな…ありがとう、アレン君」

「…はい」



お互いに目線は床に向いたまま、もじもじと台詞を交える姿はなんともいじらしい。
初々しくも似合いのカップルだと囃し立てたくなる。



(駄目だ、ここで邪魔したら空気が台無し)



その気持ちをどうにか抑えて、雪はリナリーと並ぶアレンを見た。

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