My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
離れたのは双子ではなく、どうやら雪の方だったらしい。
「ユウ?」
振り返る間もなく、トンと雪の後頭部が触れたのは神田の体。
肩を掴み後ろへ引き寄せたのは、紛れもなく彼の手だ。
「変な言い掛かりは止めて下さい」
「…アレン?」
開いた互いの空間を断つように、雪と双子の間に割り込んだのはアレンの体。
二人の双子へ向いた目は、不愉快さを表していた。
「服装一つで決め付けんな」
「彼女は僕らの仲間です」
「別にそこまで威嚇してこなくたって…」
「少し浮いてるって言っただけじゃあないか…」
予想外の神田達の反応に、まじまじと見ながら呟く双子は知らないだけだ。
しかし雪は知っていた。
自分の立場を心得ているからこそ、予想外だが二人の反応に胸の内が温かくなる。
仲間として認められていることが、素直に嬉しかった。
「だって、なぁ?仕方ないさ」
「ああ。服装も雪だけ真っ白な姿だし。君らとまるで真逆───」
「逆じゃねぇつってんだろッ」
「色で区別付けるなら寧ろ僕と神田を別物にして下さい。髪色が違うでしょ」
「あ?それはこっちの台詞だ爺面」
「女顔よりマシですね」
「ァあ?」
「なんですか?」
「おいおい…随分と仲が悪いなぁ」
「流石チンピラ仲間…喧嘩っ早い」
ジョージの言う通り。
喧嘩っ早いのは困り物だが、今はそんな二人を止める気にはなれなくて。
噛み付き合う二人を見守りながら、雪は手首の数珠をそっと握り締めた。
ノアに成ろうが成るまいが、結局のところ肝心なのはそこなのだ。
(大丈夫。気持ちさえ、繋がっていれば)
置かれた立場がなんであれ、こうして当たり前に仲間として迎え入れてくれる彼らがいれば。
(それだけで、)
きっと、前を向いていられる。