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My important place【D.Gray-man】

第17章 蓮の湖畔で君を知る



「…疲れた…」


 花畑に座り込んだまま、こっそりと溜息をつく。
 結局あの後、喧嘩腰な神田をなんとか落ち着かせて「人物描写はまた今度」ということでティエドール元帥には納得してもらった。
 スケッチしたかったのも本音だろうけど、多分こうして神田と外出するだけでも元帥は満足だったんじゃないかな。
 その証拠にあっさり描写を諦めてくれたし、今も楽しそうに風景の模写をしてるし。

 傍にいる元帥を確認した後、離れた場所で木に凭れている神田を見る。
 その顔は退屈そうに花畑を見ていたけど、帰る素振りは見せていない。
 アート・オブ・神田の効力もあるんだろうけど…なんだかんだ良い師弟関係じゃないのかな。ティエドール元帥と神田って。
 中身が正反対だから衝突もするけど、大きな包容力を持つ元帥の前では、本当に神田は手のかかる子供のようだった。

 そうやって、ちゃんと神田も周りと繋がりを持っているんだよね。
 本人から歩み寄っているかと言われれば、ちょっと疑問だけど。
 一人で生きているように見えるけど、リナリーや元帥達と人としての関わりは少なからず持ってる。
 そう思うと、なんだか自分のことのように嬉しくなった。

 …あれ。なんでだろう。
 前にリナリーとの関係を知った時は、どこか羨ましく感じたのに。
 多分、神田の生い立ちや過去を知ってしまったからなのかな。


「気になるかい?」


 不意に問いかけられた声は、すぐ近くから。
 視線を向ければ、変わらない姿勢で風景を模写するティエドール元帥の姿があった。


「ユーくんのこと」


 元帥の目は、花畑に向いたまま一切こちらを見ていない。
 なのにまるで私のことを見ていたかのように、的確に指摘した。


「嬉しいねぇ。そうやって、ユーくんのことを気にかけてくれる人がいてくれて」


 どう返せばいいのかわからなくて黙っていると、元帥は動かしていた木炭を握った手を止めて私に目を向ける。


「それに一方的じゃないみたいだし」


 一方的じゃない?


「だから嬉しくってねぇ」


 それだけ言うと、元帥はにこにこと笑った。

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