• テキストサイズ

My important place【D.Gray-man】

第17章 蓮の湖畔で君を知る



「ほらほら、そんな怖い顔しないでユーくん。折角、気持ちの良い所に来たんだから」

「花粉の匂いが鬱陶しい」


 うわ。こんな壮観な花畑を、こうも一刀両断するとは。
 やっぱり何処に行っても神田は神田だ。


「仕方ないねぇ…まぁ無理にとは言わないよ。こうして親子共にのんびりするのも、いいものだし」

「俺はあんたの息子になった覚えはありません」


 のほほんとどこまでもマイペースな元帥には、流石の神田の悪態も通用しない。
 どんなに凄みを利かせて睨んでも、涼しい顔で花畑の描写を始めてしまった。
 ティエドール元帥って、別の意味でクロス元帥と同様に底が見えない気がする。


「あ。じゃあ雪ちゃんがモデルになってくれるかな?」

「え?」


 神田と一緒にいたついでで誘われたんだろうけど、引っ越し前の本部周辺に来れるもの最後。ということで、つい私もついて来てしまっていた。
 なんとなしに花畑を見渡していたら、思いもかけず呼びかけられて振り返る。
 目が合ったのは、スケッチブックを手にこっちを見てにこにこ笑う元帥の顔。


「女性のラインは柔らかくて、描くのが好きなんだよ」

「え…いや、私は…」


 モデルなんてそんなもの、勿論過去一度も経験がない。
 恥ずかしくて首を横に振っても、構うことなくスケッチブックに握った木炭を走らせる元帥に焦った。

 どうしよう、モデルとか。
 変に動かない方がいいのかな。
 というか私、モデルできる程の容姿じゃないと思うんだけど…っ。


「その上着も脱いでくれたら嬉しいかな。その方が体のラインがよくわかる」

「ええと…っ」

「雪ちゃんはしっかり鍛えてるみたいだし。きっと綺麗な体だろうねぇ」

「いえ、そんなことは…」

「大丈夫だよ、自然体でいいから。はい脱いで」

「は、はいっ」


 のほほんと相変わらずマイペースに催促してくるけど、相手はあの元帥。
 つい言われるがまま従って上着を開く。


「阿呆か!」

「痛いっ」


 途端にばしりと後頭部を叩かれた。
 反射で振り返れば、怖い顔した神田がそこにいた。

/ 2655ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp