My important place【D.Gray-man】
第17章 憩.
「何馬鹿真面目に言うこと聞いてんだよ」
「だって…相手は元帥だし、逆らうなんて──」
「従う内容にも限度があるだろ。阿呆なこと聞いてんなッ」
苛立った口調で咎めながら、神田の手が早々と私の上着を元に戻す。
そのまま前のボタンまで、しっかり止められてしまった。
何もそこまでしなくても。
「ぷっくくっ…いやぁいいねぇ」
そんな私達に、何故か元帥は楽しそうに笑うばかり。
というか、なんか……嬉しそう…?
「やっぱり是非とも、絵に残しておきたいかな」
にこにこ笑いながらスケッチブックを手に、私達を見る元帥に。
「あんたの趣味をどうこう言う気はないが、こいつを巻き込むな」
ギロリと鋭い目で睨み付けると、神田は片手で私の体を隠すようにその背中に回し込んだ。
というか既にその顔が、思いっきりどうこう言ってます…!
「おやおや。私の息子は、身内には厳しいみたいだねぇ」
「だから息子じゃねぇつってんだろ…!」
「か、神田っ落ち着いて! 元帥は好意を向けてくれてるだけだから…ッ」
「んな好意要るか!」
殺気立つ神田を慌てて後ろから止める。
「悪気はないんだしっ、歩み寄りだと思えば…!」
「あれのどこが歩み寄りだ、ただのセクハラだろ!」
「セクハラなんて、酷い言い草だなぁ」
そんな大声で騒ぐ私達を余所に、原因であるティエドール元帥だけは始終のほほんと笑っていた。
本当に、底が知れないというかなんというか。やっぱり元帥程の器を持つ人だと思う。
…クロス元帥同様、随分と個性的な人みたいだけど。