My important place【D.Gray-man】
第17章 蓮の湖畔で君を知る
「ユーくんがそんなに生き生きと組み手をしてるところなんて、久々に見たよ」
にこにこと笑って近付くティエドール元帥に、神田の眉間に皺が寄る。
「その名で呼ばないで下さいと何度言えばわかるんですか」
辛うじて敬語を使っているけど、声は苛立ちの混じった響きを持っていた。
ただでさえ下の名前で呼ばれるの嫌うのに「ユーくん」なんて愛称、元帥程の実力がなければ早々呼べないと思う。
呼んだら最後、暴力癖のある拳で滅多打ちにされそう。
「それより彼女は大丈夫かな? 首」
「あ、はい」
そんな神田の怖い顔もさらりとスルーして、私を気遣うように声をかけてくれる元帥は、流石と言うべきか。
「そうか、それならよかった。じゃあ行けそうだね」
「はい?」
手を差し伸べてくれる元帥に、ありがたくその手を握り返す。
引っ張られるままに体を立たせれば、ぎゅっと手を握り返された。
「君達、室長から休みを貰ったんだろう? 折角の休日だし、どうかな私と一緒に」
「何をですか?」
問い返せば。いつも持ち歩いている大きなスケッチブックを片手で掲げて、元帥はにっこりと笑った。
「少しそこまで、散歩にでも」
なんとも楽しそうな声色で。