My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「出ていく時は起こしてね」
「ああ」
大人しくユウの腕に抱かれたまま、頭を広い肩に倒して預ける。
じっと間近にある横顔を見つめていれば、視線に気付いたのかな。
不意に向いた顔に、目が合う。
もう見慣れた顔なのに、急に間近で見るとドキリとする。
「…早く寝ろ」
促すように素っ気なく呟いた唇が、額に触れた。
…額にくれるキスは、少し特別な感じがする。
ほぅ、と息を吐いて体の力を抜く。
喉奥に小骨が閊えるようなもどかしい感覚はまだ少し、あったけど…それ以上に心は安堵で満たされた。
「………」
満たされた。
「………」
満たされは、した。
「……~…」
満たされは、したんだけど。
「オイ」
「…ハイ」
「なんだその眉間の皺」
「…ユウの真似?」
「茶化すな阿呆」
「ぅっ」
呼ばれて目を開ければ、ピンッと軽く指先でおでこを弾かれる。
「眠れねぇのか」
「…眠気は、あるんだけどネ…ウン」
こう、目を瞑ったら、さっきの…その…夢、を、思い出すというか…。
…………またあんな夢見たらどうしよう。
今度はユウの腕に抱かれてる状態だし。
洞察力の鋭い逃げ道を悉く潰すこの暴君さんに、もしも邪な夢に気付かれでもしたら。
………今度こそ本気で恥ずか死ぬ気がする。
「なら寝ろよ」
「…ウン…」
寝たいんだけどね…目を瞑るのが怖いというかね…。
「んだよ、怖い夢でも見たのか」
「や、そういう訳じゃ…」
怖い夢は見て、ない。
………多分?
「多分」
うん、多分。
………なんか小骨が閊える感じ。
よくわからないけど、もどかしい。
「なんだ変な顔しやがって」
「あ、うん。なんでもない」
訝し気に見てくるユウに、慌てて首を横に振る。
駄目だ、此処で変に騒いだら皆を起こしてしまうかもしれない。
ここは潔く寝よう、そうしよう。
清らかな心で。
清らかな眠りを。
邪心よ飛んでけ!