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My important place【D.Gray-man】

第46章 泡沫トロイメライ



「寝るよ。寝ます。怖い夢なんて見てないし。そんな子供じゃないし」



潔く目を瞑る。
世界は真っ暗な闇に包まれた。



「それに、最近夢見は良い気がするんだよね。…内容は憶えてないけど」

「なんだそれ」



目を瞑っていてもユウの表情はわかる。
多分、呆れた顔をしてるんだろうな。
でも本当のことだから。
夢の内容は起きると忘れてるけど、それでもここ最近の目覚めはなんだかすっきりしていた。
教団にノアのことを隠しながら、度々その頭痛に悩まされていた時は、夢見が悪いことが多かったけど…今はそんなことない。

それもこれも、隠し続けていたものを吐き出して、目の前の人に受け止めて貰って。
心が少しは安定してきたお陰なのかなぁ。



「ということで、寝ます。変な寝言口走ったら叩き起こして下さい」

「そんな寝言言うタイプだったかお前」

「もしもの話だよ、もしもの」



またユウとのセッ…あんな夢見て、変な声出したら堪らないし。
まぁでも結局はユウの夢だから…悪い夢では、ないんだけどね。

夢見が良いのは、それが原因なのかな。
もしかしたら、ユウの夢を見ているからなのかも。
…我ながら単純だ。



「何一人でニヤけてんだ、気持ち悪」

「煩いなぁ。寝るから静かにしてて」

「ハイハイ」



ニヤけてる原因はユウなんだけどって言ったら、どんな顔をするかな?
…まぁ、言わないけど。



「おやすみ、ユウ」

「…ああ」



今度こそ意識を飛ばすように、目の前の真っ暗な闇に身を投じていく。

深く、深く。






























───…この世はどうにも、不明瞭な世界だ。

己の身ひとつ。
それ以外何も望まないと独り教団で立っていた時より、色んなものを抱えようとする今の方が、息苦しくてしんどくて眩暈がするようなことばかり。
それでも、ぽっかりと空いたままだった心を満たされる思いは何物にも代えがたい。

何より"生きている"と実感できる。

そうだ、あの子…ロードもそう言っていた。
苦しさや辛さを知っているから、嬉しさも楽しさも感じ得ることができる。

不明瞭だけれど、私には今の世界の方が輝いて見える。
不安も尽きないけれど、きっと幸せを感じることも尽きないだろうから。

それが、私の───…居るべき世界。









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