My important place【D.Gray-man】
第17章 蓮の湖畔で君を知る
ファインダーとして生きる道を選んだけど、私は女。
男性である仲間達より、人一倍鍛えないと同じスタートラインにも立てないから。
入団仕立ての頃は、がむしゃらに自分を鍛えていた。
今でもその癖は残っていて、体が怠けないように修練場に通うことはよくある。
特に専ら現在の理由は、神田と組む任務が多いから。
こんなストイックな人と同じ任務をこなすなんて、生半可な体力じゃついていけない。
「人のこと言えねぇじゃねぇか」
「あはは…確かに」
呆れたように視線を上げる神田に、思わず苦笑い。
でも読書したり街に下りたり、偶にはそれなりに休日を有効活用してるんだよ。多分。
こうして改めて考えれば、随分素っ気無い休日を送っていたんだなぁと思う。
まぁ私の場合、遊ぶより此処で生きることに精一杯だったからだけど。
ふと、空になったスープ皿を置いて目の前の神田を見る。
ここまでストイックに過ごす神田も、もしかして似たようなものなのかな。
神田のことよくは知らないけど…確か19くらいだったよね。
その歳頃なら趣味か何か持って、夢中になってもおかしくないのに。
「……」
…違った。
神田の年齢は、偽造されたものだったんだっけ。
19歳という括りは、今持つ肉体の年齢だ。
本来の…移植された脳の年齢なんて、資料には記載されていなかった。
「…んだよそのツラ」
思わず昨日知った神田の事情を思い出して、じっと無意識に見てしまっていたらしい。
呼ばれて目を瞬けば、訝しげにこっちを見てくる神田と目が合った。
「ううん。なんでもない」
慌てて首を横に振る。
駄目だ、私が神田のことで勝手に暗くなるなんて。
「そうだ。それなら」
その場の空気を切り替えるように、咄嗟に思いついた案。
「どうせだから、私も一緒にしていいかな。組み手」
気付けばその案を口にしていた。
「お前と?」
「うん」
遠目で何度も見たことはある。
大勢のファインダー相手でも、簡単に全員倒していた神田だ。
そんな相手なら、私も良い修練になりそうだし。
頷けば、神田は食べ終えた蕎麦蒸籠にきちんと箸を綺麗に並べて置くと、任務時に浮かべる表情を見せてきた。
「手加減しねぇからな」