My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
心構えはしていたけど、いざその兆候をユウの前で曝け出してしまうと緊張が走る。
真っ直ぐ貫くような視線に射抜かれて、目を逸らすことも外すこともできない。
「…ュ、ゥ」
今、私の瞳は金色に輝いているんだろうか。
何も言わないユウに見据えられること数十秒。
数分のようにも感じたし数秒程度だったかもしれない。
緊張の走るまま両手を阻まれていると、不意に。
「安心しろ」
その緊張が伝わったのか、手の力を抜いたユウが落ち着いた声色で話しかけてきた。
「此処に敵はいない」
敵…そうだ。
私は、教団の…敵じゃない。
此処にいる人達も、皆。
私の敵となる人達じゃない。
「そうだろ?」
ユウの低くて心地良い声が、ゆっくりと体に浸透していくようだった。
優しく問われて実感する。
此処は、私の檻じゃない。
私自身が生きたいと決めた場所だ。
「…うん」
そっと目を瞑る。
暗闇の中でも、感じ取ることができるユウの体温。声。匂い。
…目の前に、ちゃんと望んだ人はいる。
そう実感すれば、ふ、と体が微かに軽くなったような気がした。
「雪」
名を呼ばれ、ゆっくりと視界を開ける。
まだ間近にあったユウの顔が私の目を見据えたかと思えば、やがて深い吐息をそっと零した。
捕まえられていた手を引き寄せられる。
そのままぽすりと、ユウの腕に体は囲われた。
「ユウ?」
「もう心配ない」
心配ないって…目の異変が治まったってこと?
鏡はないからわからない。
でも、自分の体のことだからなんとなくわかる。
さっきまでくらくらと揺れていた頭の振動が消えていたから。
「体、まだ変にきつい所ねぇか」
「…大丈夫。ないよ」
キツさやダルさはない。
正常そのもの。
そっとその背に応えるように腕を回す。
はっきりと自覚ある頭で、目の前のユウの抱擁に身を包まれていれば…不安は不思議と解消された。
本当に体の異変は治まったのか、この目で確かめてもいないのに、なんだかほっとした。
…凄いなぁ、ユウの持つ力。