My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「寝る場所がねぇんだろ」
手招きしてくるユウに、無造作に寝転がってる皆の体を踏まないよう注意しながら、ゆっくりと近寄る。
…あれ?
そういえばトクサの姿が見当たらない。
流石に此処では寝落ちなかったんだ…鴉らしいけど。
そういえばリンクさんの姿も見えなかったなぁ…アレンは此処にいるけど、何処かで待機してるのかな?
流石監視役の二人。
「ぶつけた所は大丈夫か」
「うん、もう痛みもないし。平気だよ」
気に掛けてくれるユウに笑顔を返して首を横に振る。
間近に寄れば、ユウの顔をよく見ることができた。
…あんな夢を見た手前、少し恥ずかしいけど…でも、心配してくれるのは嬉しいし。
ここは素直に甘えて───
「?」
ユウの目の前で膝を付けば、不意に腕を掴まれた。
結構な強さで。
「ぃ…ユウ?何」
するの、と問おうと目を向ければ、すぐ目の前にはユウの顔。
食い入るように見て来る間近な眼力に思わず仰け反ってしまう。
というか、凄く近い!
「お前…」
「え?何?」
ユウの目が凝視しているのは私の顔。
真っ黒なその瞳が鏡のように、困惑した私の顔を映し出していた。
何そんなに驚いてるの?
…まさか鼻の頭、怪我しちゃってる?
すると険しい表情を浮かべるとユウは徐に舌を打った。
えぇ…本当に何。
少し不安になるんだけど。
「ユウ?」
「お前、体に異変は。変な所ないのか」
「な、何もないよ。少し頭がくらくらするだけ…で…」
言い掛けた言葉が萎む。
なんで今ここでユウが私の体調を気にするのか。
夕方に手当てしてくれた体の怪我じゃないことはわかる。
となると…一つしかない。
「…?」
…あ、れ。
そういえば何か忘れているような気が……なんだろう…?
この、喉元に小骨が閊えるようなもどかしい感覚。
「わた、し…何か、変…?」
薄暗い部屋だけど、変化くらいなら見て取れる。
見下ろした肌は褐色に染まってはいないし、ユウの瞳に映った私の額にも聖痕らしきものはなかった。
あと残す所と言えば───…
「っ」
思わず目元を押さえれば、ユウに手を掴まれ阻止された。
覗き込んでくるその表情で悟る。
やっぱり、ノアの異変が、出てしまったんだ。