My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「───ぶッ」
覚醒は突然だった。
「ぃ…った……何…」
いきなり顔面に鈍痛。
あまりの痛さにまともな悲鳴も出やしない。
少し間を置いてじんじんと痛み始める鼻の頭を両手で押さえながら、顔面とこんにちはをしていた床からのそりと体を起こす。
暗い部屋。
…違う、薄暗い部屋、だ。
───ザザ…
微かな物音と光に目を向ければ、砂嵐を起こしている見覚えのあるテレビ画面。
その明かりに照らされて、何処だか理解できた。
…此処、私の部屋だ。
「むにゃ…もう食えね…」
「すー…」
「がー…んがっ」
砂嵐だけの静かな部屋じゃない。
あちこちから上がる寝息と寝言。
見れば、こんもりと膨らんだ布切れが幾つも───あ。
思い出した。
そういえば寄って集られた皆に押し掛けられて、自室でホラー鑑賞会とゲームしたんだっけ。
「うわあ…」
段々と痛みが治まってくる鼻の頭から手を離して、辺りをぐるりと見渡す。
狭い部屋にぎゅうぎゅうに詰め込まれたエクソシストとファインダー。
床に寝転がって布団やブランケットを被っているのは、アレンとラビとゴズとバズ。
あ、向こう側にマリとクロウリーの背中が見える。
「やったーぃ…オレの勝ちぃ…」
不意に上がる寝惚けた歓喜に振り返れば、ベッドの上には女性陣。
シングルベッドにどうにか身を寄せ合って仲良くリナリーとミランダが眠る中、エミリアの腕の中でへらへらと楽しそうな夢を見ているティモシーが寝言を零していた。
ジャンクフードの食べ残しが残っている机や床には、幾つもの酒瓶や酒缶が転がっている。
そっか…遊びついでに飲み会も入って、かなり騒いだんだっけ…そのまま皆寝落ちちゃったんだ。
「ええと…」
お酒の飲み過ぎか、ぐらぐらと揺れる頭を押さえて記憶を思い起こす。
楽しかったけど、ゲームに負けた罰ゲームでリナリーにコムイ室長の実験室に行くよう言われて、確かユウと───
「あ。」
思い出した。
あそこでリアルリナリー蝋人形を見つけて、卒倒しそうになったこと。
…すんごく怖かった。