My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「ユ、ウ?」
どうしたんだろう。
いつものユウとは、何かが違う。
声を掛ければ、ゆっくりと被さっていた体が僅かばかり離れた。
暗い部屋。
視界の悪い中で見えたのは、真っ黒な影のような人。
そんな人影、なのに。
「───ひは」
そこだけはっきりと見えるかのように、ニィと三日月のような形を描いた口元が笑った。
「───っ」
息を呑む。
それはユウじゃなかった。
「な、に…ッ」
真っ黒に塗り潰されたような人影だとか。
口元だけがやけにはっきりと見える奇妙な構図だとか。
色んな疑惑要素はあったけど、それ以上に心が否定した。
これはユウじゃない。
「え、っ…な、何…ッ!」
いきなりのことに頭が付いていかない。
まともな言葉も形成できなくて、本能的に体が逃げようと目の前の胸を押し返す。
「ッ!?」
だけど満足に力を入れる暇もなく、何かで両腕を縛り上げ枕に押し付けられた。
ギリリと痛い程にきつく縛り上げてくるものがなんなのか、暗い部屋じゃわからない。
それでも視線を頭上に向ければ、見えたのは両腕に群がるぞわぞわと動く触手のようなもの。
何、これ。
「は、放し…てッ」
訳がわからない。
何これ。
誰これ。
ユウは何処。
此処は何。
ぐるぐると回る、だけど回らない思考でパニックに陥る。
惑わすのは目の前の得体の知れない人影で、その混乱を止めたのも目の前の得体の知れない人影だった。
「───ぁっ」
ひくん、と体がしなる。
急に膣内で押し上げられた熱によって。
勝手に口から零れた、嬌声とも取れる自分の声にぞっとした。
そう、だ。
私、今の今までその行為を目の前の"これ"と…やってた。
「ぅ、あ…嫌…ッ」
「ハァ…」
「ぃ、嫌…ッやだやめて…!」
「ハァ…ッハ…ッ」
「や…ッぁぅ…っやぁ、あ…ッ!」
ぞわりぞわりと四肢に絡み付き軋む程の強さで縛り上げてくる、黒く蠢くもの。
限界まで開かされた股の間で、謎の影が容赦なく腰を打ち付けてくる。
そこには愛も優しさもない。
浅ましい、まるで交尾のような行為だった。