My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「お前も探せ。でないといつまでも此処から出られねぇぞ」
「ああ、うん…」
というか、そんな律儀に探してるユウの姿の方が珍しいんだけど。
……余程リナリーが怖いんだろうな。
急かされるまま、私も渋々暗がりの中を探し始めた。
大体、リナリーに酷使した人形、としか情報を聞いていないからよくわからない。
どれくらいの大きさなのかな…それさえもわからないんだけど…。
…大体、此処にしかないって思うのならリナリー自身が探しに来ればいいのに…。
………。
もしかしてリナリーも怖いのかな?この部屋。
「はぁ…そのうち何か出るんじゃないの…」
「何か言ったか」
「…ううん別に。独り言」
堪らず溜息をつきながら、部屋の隅にある棚を開く。
縦長のロッカーのような両開きの棚の中には、モップや箒が押し込められていた。
…掃除用具入れ?
この部屋を掃除する為のものかな…にしても大分汚れてる。
モップの先なんて赤黒く変色してるし…なんだろう、これ…
「なんか臭い…」
鼻を微かに突く異臭。
堪らず口と鼻を押さえながらモップを退けいく。
結構奥行きあるなぁ…。
「チッ…何処にもねぇな。おい、そっちに目ぼしいモンはあったか」
「ううん。ここもただの用具入れみたいだし。やっぱり人形なんて何処にも───」
ないんじゃないのかな。
そう呟く前に、箒を退かした用具入れの奥底で───目が合った。
奥底から出て来た、人の顔と。
「っひゃあぁあああ!?!!」
「どうし───!?」
「し、し、し」
「し?」
「しし死体!死体ぃい!」
恐怖で上手く呂律が回らない。
飛び上がらん勢いで後ろに跳びはねると、そのままぶつかったユウにしがみ付いた。
「おま…っ」
「ジジジジェイソンに殺される…!!!」
「落ち着け馬鹿!」
これが落ち着いていられますか!
いつも高い位置にあるユウの顔が、なんだか目下にあるような気がしないでもないけどそんなこと気にしてられない!
目の前にある体にしがみ付いたまま後ろを指差し振り返れば、箒の間からゆらりと傾く人の顔が───あ。
ゴツッ
鈍い音を立てて、転がり落ちた。
その細い首の上から。
「ぎゃーッ!!!!」
く、く、首が捥げたァアアアアア!?!!!