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My important place【D.Gray-man】

第46章 泡沫トロイメライ



「───いつ来ても気味が悪い…」

「そんな頻繁に来るような所か、此処」



ギィ、と重い扉が軋み開く。
真っ暗な部屋に廊下の薄暗さが差し込んで、狭い実験室を鬱蒼と視界に映り込ませていた。

天井からぶら下がっている大刃の鋸や釜や斧。
壁の棚にはチェーンソーやら鎖やらが置いてある。
まるで手術台の如く、真ん中に置かれているのは大きな鉄のベッド。
四肢を縛る為の鎖が四隅のベッドの柱に繋がっていた。

その各々に見覚えがある。



「来たくはないけど、来たことあるでしょ。ゾンビウイルス事件の時に」



ウイルスに侵された私を救う為に、ユウが連れて来てくれた場所が此処だった。
体をベッドに縛り付けられた状態で目を覚ました時は、心底驚いたけど。

…あの時、初めてユウの笑った顔を見たんだっけ。
戦闘中に浮かべるような挑発的な笑みじゃなく、本当に"笑顔"と呼べるようなもの。



「懐かしいなぁ…」



懐かしい、と思える程に時と事は経過していたんだと思うと、なんだかちょっぴりじんとくる。
それだけ、私はユウとここまで歩いて来られたんだと思うと。



「何ほざいてんだ、さっさと人形探せ」

「ああ、うん……この中から?」

「それしかねぇだろ」



しみじみと浸っていたら、いつものぶっきらぼうな声が現実へと戻した。
ちょっとくらい浸ってたっていいじゃない…と言う暇もなく、ユウは無造作に置いてあった刃物を退けて目的物を探し出す。

私達の探し物は、コムイ室長が作ったとされるリナリーを模した人形。
あまりのリアルさにリナリーが取り上げようとすると、玩具を取られた子供のように泣き喚き抵抗しただとか。
相変わらず、リナリー相手じゃ室長の威厳も何もない。






"あと探してないのはあの実験室だけなのよね…あそこにきっとあるはずだから、取ってきてくれない?"






罰ゲームというより、リナリーに良いように使われてるだけな気もしないけど…そんな人形、早々に見つけて処分したい気持ちもわかる。
対象人物そっくりの人形を作って愛でるなんて、兄妹でなかったら重度の危険人物だから。

…いや、もう色んな意味で危険人物だな。

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